内容説明
「危機」は、これまで伏在していた憲法理論上の諸問題を顕在化させた。憲法学界を代表する執筆陣がこれら難題に正面から挑み、“ポスト3.11”のアクチュアルな憲法原理論の構築に寄与しようとする、果敢な試み。
目次
「危機」への知の対応―16世紀と20世紀:2つの例
統治のヒストーリク
決定‐アーカイヴズ‐責任―“3.11”と日本のアーカイヴァル・ポリティクス
執政・行政・国民―フランス原子力安全規制を素材として
危機・憲法・政治の“Zone of Twilight”―鉄鋼所接収事件判決におけるジャクソン補足意見の解剖
国家緊急権論と立憲主義
世代間の均衡と全国民の代表
危機と国民主権―基盤のゆらぎと選挙
原子力災害と知る権利―危機における情報公開と危機対応の検証の観点から
表現の不自由と日本“社会”
公教育における平等と平等における公教育の意味―「フクシマ」のスティグマ化に抗して
生存・「避難」・憲法
既得権と構造改革―「危機」は財産権の制限を正当化するか
憲法9条・考
著者等紹介
奥平康弘[オクダイラヤスヒロ]
1929年生まれ。東京大学名誉教授
樋口陽一[ヒグチヨウイチ]
1934年生まれ。東北大学・東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
23
葛西まゆこ「生存・『避難』・憲法」(351-380頁)は極めて重要。私の扱っているテーマを法学でアプローチするとこうなるが、私は文化経済学で生存できる地域の経営を問うことにしている。論点が整理されていてわかりやすかった。アメリカに学ぶ事例も出されている。ここでは、生存権から人間の安全保障、人間の尊厳といった価値を重んじておきたい。8月5日に書いているが、O村は集落散在で、とてもじゃないが、撤退の農村計画などできないと実感した。あの迷路のような集落をもつ地域は合併しなかった。潤沢な電力財源があるためだろう。2015/08/20
Haruka Fukuhara
6
豪華執筆陣。樋口陽一「「危機」への知の対応――16世紀と20世紀:2つの例」、石川健治「統治のヒストーリク」、蟻川恒正「決定―アーカイヴズ―責任――〈3.11〉と日本のアーカイヴァル・ポリティクス」、長谷部恭男「世代間の均衡と全国民の代表」など。石川先生の論稿は以前読んだものとやや似たもの。長谷部先生の論稿は政治学でなく憲法学の先生が扱うこと自体が興味深い話題。もっとも長谷部先生はinteractive憲法などを見ても元々政治学に造詣の深い先生だが。全体的に記述が硬質・高度であまり理解できた感はない…2017/05/20
田舎暮らしの渡り鳥
4
3.11における憲法学。2019/11/08
メルセ・ひすい
4
哲学は、愛と叡智!現憲法にはカントの『永遠平和のために』が体現する理念・理想がある。太平洋戦争に敗戦して無条件降伏した日本に対して、アメリカ憲法学者が二度と国としての体を為さないよう、英文で草案した法律。二度と前明治憲法を根拠とした強力な軍事優先主義国に至らないよう、骨抜き国?・米国日本州として生きるよう草稿されている。「危機」は、これまで伏在していた憲法理論上の諸問題を顕在化させた。憲法学界を代表する執筆陣がこれら難題に正面から挑み、「ポスト3・11」のアクチュアルな憲法原理論の構築に寄与しようとする2013/05/01
kozawa
2
書名を「憲法学が危機」なのかと思ったら「(日本の)危機における憲法」の話。各執筆者が思い思いのテーマで。結論等はとまれそれぞれのテーマ自体は概ね価値はありそう。時期が時期のせいか、原発・震災関連の「危機」に「憲法なりに基づいて何が出来たかどうすべきか」関連が多かった。当然ながら「完全に危機に対応出来る法などあり得ず緊急時には超法規的措置の余地は必ずあるのだ/しかしあまりに準備が出来てないと色々困る/いや余計な制約がない方が法に戻るいい圧力が加わる」等(気になるなら素人の要約信じずに原著参照推奨)の言及も2013/04/07