出版社内容情報
荒木 亮[アラキ リョウ]
著・文・その他
内容説明
世界最大2億3000万人のムスリムが暮らすインドネシア。世界的に興隆するイスラーム復興がこの国でも起きている。しかし、必ずしも「過激化」や「原理主義化」を意味しない。その動態を「構造主義」と「混成性」をキーワードに生活世界の日常性から紐解く。
目次
イスラーム復興をめぐって
第1部 都市におけるイスラーム復興の諸相と混成性(近代化とイスラーム化における混成性―世俗的説教師の人気現象;敬虔と威信―小巡礼(ウムラ)をめぐる両義性と媒介性
宗教性と世俗性の相克―お洒落なヴェールと批判的言説)
第2部 村落から考える混成性とイスラーム復興の実相(憑依儀礼にみる信仰の多声性―クダ・ルンピンの活発化;憑依現象と除霊儀礼―ルキヤというイスラームの救い;混成性から紐解くイスラーム復興と生活世界)
補論 “構造”と「媒介」からみる宗教文化
著者等紹介
荒木亮[アラキリョウ]
1987年三重県に生まれる。首都大学東京・都市教養学部卒業。同大学大学院・人文科学研究科・博士後期課程修了。博士(社会人類学)。インドネシア科学院・客員研究員、宗教情報リサーチセンター・研究員などを経て、現在、日本学術振興会特別研究員・PD(東京大学・総合文化研究科)。神奈川大学の非常勤講師を兼任。専門は社会人類学。東南アジア島嶼部、特にインドネシア社会の近代化と宗教文化の研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
20
インドネシアにおけるイスラーム回帰は原理主義化ではなく、社会的・個人的な言動の次元においてますますイスラームが参照または援用されている状況だという。都市部ではお洒落でカラフルなヴェールやイスラーム服が大衆消費文化としての「世俗化」と「宗教化」という異なる価値を併存させている。都市周辺の村落では、慣習的行為としての(非イスラーム的な)「憑依儀礼」や憑依現象に対するイスラーム式の「除霊儀式」も行われている。これらの構造を「混成性」という概念を用いてインドネシアのイスラーム復興の多元的な析出がなされている。2023/05/01
Ahmad Todoroki
1
2年前までインドネシアに20年住んでいたので、結論に全く異議なし。インドネシアのムスリムは「緩い」のではなく「選択的」というだけのこと。とは言え、インドネシアは広い。本書はあくまで日本人研究者がアクセスしやすいスンダ地方におけるフィールドワークとして読むのが正しいのではないかと思います。2024/08/23