出版社内容情報
ハニヤ・ヤナギハラ[ヤナギハラ ハニヤ]
山田美明[ヤマダ ヨシアキ]
内容説明
1950年、若き免疫学者ペリーナは、人類学者の調査に同行して南洋のイヴ・イヴ島へと向かう。森の奥深くに住む部族と、集落から疎外されてその周囲を徘徊する人々を調査するうち、彼は驚くべき発見をする。それにより科学者として名声を手に入れたペリーナだが、そのことが島や彼自身の人生に恐ろしい代償を強いるのだった…実在の科学者をモデルにしながらも、作家独自の世界観を圧倒的筆力で描いた話題作。衝撃のデビュー作。
著者等紹介
ヤナギハラ,ハニヤ[ヤナギハラ,ハニヤ] [Yanagihara,Hanya]
ニューヨーク在住の小説家。大学卒業後は雑誌の編集・執筆の仕事をしながら、2013年にデビュー作となる『森の人々』(The People in the Trees)を発表。多くの新聞・雑誌で絶賛される。2015年に発表した2作目A Little Lifeもベストセラーとなり、ブッカー賞、全米図書賞の候補となるなど、いま最も注目される作家の一人となった
山田美明[ヤマダヨシアキ]
翻訳家。東京外国語大学英米語学科中退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
84
(辛口コメントです)この本の「男色版ロリータ」という感想がきっかけで相互貸借で借りました。そう言われるのも納得ですが、ここまで胸が気持ち悪くなる小説はそうそうないんじゃないかしら。語り手は私から見ると常に自分以外の生き方や視点を持つ他人を馬鹿にし、他者を常に自分の思い通りにしたいレイシストで男尊女卑、病疾的なまでのナルシストで冷酷な輩としか思えない。その主張を補強するかのような友人による注釈も無理に読み手を視野狭窄にしようとしているかのようで薄気味悪い。そして削除された頁は余りの気持ち悪さで目眩がした程2018/08/07
ヘラジカ
48
恐るべき処女作。今まで小説というものを書いたことのなかった人間が、第一作目で本当にここまでの作品を創出できるものだろうか。あらすじから単なる怪奇小説だと思うなかれ。緻密な設定と優れたストーリーテリング・労力を注いだに違いない巧みな構成・そして臨場感溢れる自然と心理の描写。どれをとってもこの不気味でオカルティックな物語が不足なしに第一級の小説であることを証している。この本に関しての唯一の不満点と言えば、あとがきで著者2作目の翻訳予定について触れていないことくらいである。大満足の読書だった。2016/09/18
ちょき
46
都会から移住した森好きの人々が暮らすヒューマンドラマを勝手に想像してたら、ガッチガチのハードSFだった(笑)。医師として南太平洋の島で未開の民を発見し、彼らの不思議な生活や不老不死になるカメ肉の話やら盛り沢山で織り交ぜてあり、最初のプロットである博士の性的虐待訴追ミステリーへと展開していく。伏線も多い。椎名誠級のトンデモSFに近い感じだがこちらが格上。特徴的なのは、異常なまでの論理性の追求にある。フィクションに何もそこまでと思いもしたがまぁ面白かったからよしとするか。やや男性向き。好きな人ははまるかもね。2016/10/21
こーた
40
人類にとって不死は永遠の夢だ。食べれば不死になるという亀オパ・イヴ・エケを求めて、男は南国の森を彷徨う。森で手に入れた幻の不死が、男にノーベル賞の栄誉をもたらす。南の島の神話と、虚構の科学史が混ざりあう。信頼できない語り手。それどころか、この文章を発表する編集者さえ、語り手への愛が強すぎて信用できない。膨大な脚注さえ虚構だ。幾重にも折りかさなる虚構が森を成し、わたしはその密林を彷徨う。科学者の感性とアプローチが、現実と重なる。これは夢なのか?森に住まう夢人たちとともに、わたしは小説という夢のなかを彷徨う。2017/05/26
かんやん
35
南太平洋の文明から隔絶した島に、驚異的な年齢に達した人々が生きていた。この長寿の研究が評価されてノーベル賞を受賞した学者が、養子(島からの)への性的児童虐待によって有罪となり、服役中に執筆した自伝という体裁。歩いても歩いても目的地に辿り着けないような鬱蒼とした密林の描写が魅力的だ。しかし、豊かな島の環境は彼の研究に壊滅的な影響を被ることになる。この男の傲慢、野心、そして無責任を、主観的に経験するという何とも胸のざわつく読書体験。野心を叶えても、その孤独は癒されることはないのである。いや、堪能しました。2021/07/30
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