内容説明
吉本が視力の衰えから、“語る人”に転身したのは1998年前後のことである。語ること―吉本はその一点に賭けた。それは表現者としての執念でもあった。外国に生涯、一度も行かなかった理由から、娘・ばななの作品評価まで、知られざる晩年の肉声を担当20年の編集者が記す。
目次
第1章 “語る人”
第2章 “座談”まで
第3章 “素顔”の吉本隆明
第4章 “文学”に関する断章
第5章 “社会”のゆくえ
第6章 “こころ”をめぐる断想
著者等紹介
松崎之貞[マツザキユキサダ]
1947年、埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。1970年、徳間書店に入社。一貫して編集部門を歩き、2002年、ノンフィクション部門の編集局長を最後に退社。その後、フリーの立場で書籍の編集に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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酩酊石打刑
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インタビュー本の本にならなかった部分の、 いわば与太話の類を集めたもの。 でも、逆にパーソナルな感じが強くていい。 なんか、死んだあとの草刈り場と化した時の、 火事場泥棒めいた感じがして立ち読みでいいと思った。 しかしながら、やはり手元に置いておきたい感じの本だ。2013/02/07
マルセル
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吉本の「談話」を何冊も本にまとめてきた編集者による「晩年の吉本隆明」の姿と、本には収録されなかった「座談」の集大成。 目を悪くして書けなくなっても、語ることで発言を続けようとした吉本の執念がよく伝わってくる。 「座談」のほうも、娘ばななについての感想や、老人とは何か、死とは何か……などなど、興味深い談話が盛りだくさんで、一気に読了してしまった。 ついに本にはならなかった「詩歌の潮流」という談話の骨子(要約)が20~30ページにわたって紹介されているのもありがたかった。 とても分かりやすい、いい本です。 2012/08/17
yoyogi kazuo
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一九九〇年代以降の「語り本」の多くに携わった編集者による回想録。吉本隆明はやはり「書く人」で、書いた文章(語り口調を巧みに混ぜたスタイルも含めて)が最も魅力的だが、「語り」も読ませる。もっとも「語り本」には編集者による手が加わっているので、平易になりすぎているきらいがある。フランス語に訳したらさっぱり面白くなかったというエピソードが出てくるが、吉本思想は平易な文章で書かれると魅力が半減する。彼は徹頭徹尾「日本の大衆思想家」であった。そこに吉本の偉大さがあったとおもう。2022/03/27