内容説明
「まだ、しちゃだめかなぁ」「うーん…」私の取材は、抗がん剤治療中の恋人の切ないひとことから始まった…いつ、どんな状態ならOKなのか?置き去りにされてきたがん患者のセックスライフに初めて切り込んだ「新潮ドキュメント賞」受賞作家、渾身のリアルレポート。
目次
第1章 「いつから、してもいいのですか?」
第2章 「がんと性」情報の現状
第3章 がん患者たち、それぞれの性事情
第4章 志ある認定看護師たちの取り組み
第5章 最期のセックス
著者等紹介
長谷川まり子[ハセガワマリコ]
1965年、岐阜県生まれ。ノンフィクションライター。世界の社会問題を取材する過程で、インド・ネパールの越境人身売買問題を知りライフワークに。新聞、雑誌、書籍、テレビドキュメンタリーを通じてリポートするとともに、1997年、人身売買被害者支援のための無償ボランティア団体「ラリグラス・ジャパン」を立ち上げ、その代表としても活動を続ける。2008年、十余年にわたる取材をもとに人身売買の実態を描いたノンフィクション『少女売買~インドに売られたネパールの少女たち』(光文社刊)が、新潮社が主催するノンフィクションを対象とした文学賞「第7回新潮ドキュメント賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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磁石
6
人間の三大欲求のひとつである性欲。それがあるかないかできるかできないかが、生死の境にいるがん患者たちには、あるいはそのパートナーたちにとっては、抜き差しならない問題になっている。だけど、品行方正な病院の中では、なかなかそれを聞くことができない。秘め事である以上、どうしてもためらってしまう。そして、このような極限のケースを見ると、性教育そのものが、ほかの国々に比べると、あまりにも後進であったことに気づかされる。……肛門にも幻肢痛が存在するなんて、知らなかった。2013/08/01
ゆぅか
5
著者のパートナーが抗がん治療受けることになりガン患者の性問題を口に出し回答得られる場が少ないことからリサーチした本。知ってる本や人の名前も出てきたが新たな情報も得られた。ドクターが命・治療に直結しない性問題を横においてる感は感じる。それでも私はズバリとは聞けないけど尋ねる。パンフレットおくなどの活動が拡がっていることがありがたい。2010/10/13
kiriya shinichiro
4
紹介していた人がいたので読んでみた。タイトルがどきつく感じられるかもしれないけど、治療中、どこまでパートナーとふれあっていいのか、という、素朴だけど、誰も答えてくれない疑問を掘り下げた本。闘病の方が大事でしょう、とないがしろにされるものがある。でも、相手が愛情の確認を求めてきたのに断って、そのまま亡くなってしまったら、本当に後悔するだろうな……いろんなことに気付かされます。2016/04/29
すばる
1
がん患者のセックスについて知りたいと思ったところ、ずばりそのもののタイトルの本があったことにまず驚いた。私事だが10年来のセックスレスを解消して思ったことは、セックスは生であるということ。余命宣告を受けたがん患者ならなおのことだろうと思う。この本は、著者のパートナーが悪性リンパ腫で化学療法を行っているときに生じた疑問の答えにたどり着くまでの記録でもあるが、がん患者のセックスに正面から取り組んだ稀有な本でもある。今は少ないが、真剣に取り組む医療者が増えることで、性について相談することが当たり前になるといい。2024/03/10
界
1
この題を見てハッとさせられた。死の淵に立つ者が命を築くという行動は何の為にするのだろうかとひとつ疑問に思いつつ読み進めた。端的に答を述べると「生きていることを実感する為」である。現在の医療に性を持ち込むのは一般的にタブーとされているが、性に悩む患者は意外に多いことを知った。がん患者は生命力を欲している。生きる実感を得て初めて人は死の舞台から降りることができる。また、著者の行動力は圧巻だ。医療における性の固定概念を最前線で変える方の経験は貴重であり、医療関係者以外にも読んでほしい一冊である。2019/06/23