内容説明
よりシンプルな答えこそ好ましく、往々にしてそれは正しい―複雑さや冗長さを容赦なく削ぎ落とすさまから「オッカムの剃刀」と呼ばれるこの思考の方針は、科学を宗教の支配から解放し、地動説、量子力学、DNAの発見など、多くの科学的発見を支えることとなった。本書は科学の発展史を辿りつつ、単純さこそが、宇宙や生命の誕生といった深遠な謎を解き明かす鍵であることを示す壮大な試みである。そしてすべては、中世の神学者の冒険から始まる―
目次
1 発見(学者と異端者;神の摂理;剃刀;権利はいかに単純か;科学の一瞬の輝き;空白の時代)
2 扉が開かれる(太陽を中心に戴いた神秘的な宇宙;天球層を打ち壊す;単純さを地上の世界に当てはめる;原子と全知の霊魂;運動の概念;運動を利用する)
3 生命の剃刀(生気;生命の導き;エンドウマメ、マツヨイグサ、ショウジョウバエ、盲目のネズミ)
4 宇宙の剃刀(最高の世界か;量子の単純さ;剃刀を開く;もっとも単純な世界か;終章)
著者等紹介
マクファデン,ジョンジョー[マクファデン,ジョンジョー] [McFadden,Johnjoe]
英国サリー大学の分子生物学教授。インペリアル・カレッジ・ロンドンで博士号を取得。結核や髄膜炎を引き起こす微生物の遺伝学を研究している
水谷淳[ミズタニジュン]
翻訳家。著書に『科学用語図鑑』(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
99
ある事柄を説明するために必要以上に多くの仮定を用いるべきではないという所謂「オッカムの剃刀」を軸に科学の進歩を辿る。その用語は以前から目にしていたことはあったが、オッカムというのは実は地名(イングランドの小村)で、そこで生まれた修道士ウイリアムが思想の提唱者であることを本書で知った。オッカムのウイリアムは中世のスコラ哲学とその神学的科学を丸裸にして、神は全能であるという一つの前提まで単純化し、そこから導きだされる帰結について考えた。一種の科学史ではあるが、これまで自分が読んだ科学史の著作とは一味違った。⇒2024/11/02
ばんだねいっぺい
25
内容は、そんなにシンプルではない。オッカムの剃刀が後世にどのように影響を与えたかをひとりひとりの学者に光を当て、科学の発展を語る。面白かった!2023/12/22
teddy11015544
13
科学史の歴史的展開。面白くてわかりやすい。オッカムの剃刀がこの世界の原理だった。2024/01/23
リットン
13
複雑な理論より単純な理論のほうが正しいというオッカムの剃刀を中心に科学の変遷を辿っている。神学から科学を切り離し、燃素や生気のような科学の中の「なんか不思議なもの」もだんだん場所を追われていって今に至る。プトレマイオスの地球中心説は反証されたのではなくて、太陽中心説の方がシンプルに事象を説明できるから、正しいのだ、というのはなるほどと思った。素人目には、今の量子科学とかが単純な理論には思えないが、今より世界を単純に説明できる神の方程式が今後生まれることもあるのかなぁ。2023/08/11
moon-shot
10
いわゆる科学史物ですけど、「オッカムの剃刀」(=よりシンプルな理論ほど正しい)と言う「原則」を切り口にした所が新しい。「法則」ではなく「原則」。証明されてる訳ではない。プトレマイオスの天動説モデルは複雑緻密な構成で、円軌道を想定していたコペルニクスの地動説よりも天体の運行を精密に予測できたんだけど、多くの人がよりシンプルな地動説に魅力を感じて、ケプラーの楕円軌道のアイデアに繋がった。でもどうしてシンブルな理論を人間も自然も好むんでしょうね。そこはちょっと謎が残りますが、まあそれもまた良し。2024/03/18