内容説明
「悪の帝国」というようなレッテル貼りでは、あの国のことを理解できない。ソ連邦末期から現在へ―巨大国家を内部から揺るがす知識人との対話から著者は何を見つけたのか。
目次
第1章 前夜(三位一体の乾杯;革命は酒場から始まる;ジョージアレストラン「アラグヴィ」;無責任体制;バルト三国の風土;モスクワ・リガ駅;ラトビア人のアイデンティティ;連邦を構成する条約;二重スパイ;警告のシグナル;世界観の全体主義;ナショナル・ボルシェリズム;3日で終わったクーデター)
第2章 失踪(外交行嚢の現金;拘置所にて;コヘレトの言葉;保釈;研修指導官;スターバックス;井上邸訪問)
第3章 再会(サンクトペテルブルクからの電話;招待状;断酒;靖国神社;沖縄系日本人;懲罰部隊;ハマーセンター;ナショナリズムへの傾倒;公定ナショナリズム;鈴木宗男事件;メドベージェフ;日本の形勢悪化;記録と記憶;継承;急ぎつつ、待つ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
76
2023年7月刊 長年ロシアでさんざんウォッカ飲んだせいか、著者最近体調悪いみたいです。大丈夫かな。 ロシア時代の友達とのその後。後書きが驚きでしたが。 食べ物の話になると筆が輝きます。食べるの好きなんですね。2024/03/12
ぐうぐう
38
タイトルが示すように、『自壊する帝国』のその後を回顧する佐藤優の自叙伝。あのサーシャとの再会が描かれている。インテリジェンスな対話から、ロシアという国が(と同時に日本という国も)見えてくる。しかしその像は、報道で知る姿とはかなり違う。ソ連崩壊を目論み、ラトビア独立を画策したサーシャが、現在はプーチンの側近としてウクライナ侵攻を支持しているという大胆な転向は、しかし歴史の皮肉ではなく、歴史をより深く知ることで辿り着くインテリジェンスのひとつの可能性として見ることができる。(つづく)2023/09/28
サトシ@朝練ファイト
36
自壊する帝国の続編?という気持ちで読み始めたがサーシャを軸にした自叙伝と読んだ。ソ連崩壊がラトビアから火がついたあたりの流れが再度勉強になったと思う。また同志社に講師として招かれたあたりの流れがわかった。ロシアのみならず現代の日本における歴史的縛りをサーシャとの会話の中でつまびらかにします。深い内容にも関わらずとても読みやすかったです。2023/11/05
kawa
33
「国家の罠」「自壊する帝国」(未読)「先生と私」(未読)「十五の夏」に続く自伝的ノンフィクション。モスクワ国立大の学友で親友・サーシャとの交流を通じて、モスクワ大使館時代に目にしたソ連崩壊、友人の出身地ラトビア行、帰国後の様々な事件と再開等を描く。ラトビア生まれのロシア人・サーシャ。ラトビア独立運動参画後、人種主義的自民族中心主義のラトビアに幻滅、今ではプーチンのスタッフとして働く。ソ連崩壊~ロシアの今まで、混乱の真っただ中にいた人物を通して、かの地のリアルな様子が浮かび上がる。両氏の知的会話も刺激的。2023/09/21
ゆうきなかもと
14
私が、佐藤優に最も期待している表現形態は、本作のような自伝的教養小説だ。そして、今回も期待通り、面白く、ほぼ一気読み。だが、これもいつも通り中身の濃さと、分量の多さから、読むのにほぼ3日は掛かった。ほぼ徹夜で読んだ日もあったのだが。 ともかく、佐藤優のこの手の作品ほど知的でスリリングな小説はないと言いたい。そして本作もその期待は裏切らないものだったと思う。2023/08/15