内容説明
私は他人に語れることを何一つ持っていない―むつみ(マッサージ店店主)。やっぱりここは、俺にふさわしい七位の場所なのかもしれない―橋場(カフェバー店長)。私から、こんな風に頭を下げてでも、離れたいのだ、この人は―朝海(古書店バイト)。どうすればあの人は私を好きになってくれるのだろう―十和子(IT企業OL)。私は、真夜中の散らかった1DKの部屋で、びっくりするほど一人だった―天音(元カフェ経営者)。きっと、新しい一歩を踏み出せる。ありふれた雑居ビルを舞台に、つまずき転んで、それでも立ち上がる人の姿を描いた感動作!
著者等紹介
彩瀬まる[アヤセマル]
1986年千葉県千葉市生まれ。上智大学文学部卒業。2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞。’13年、小説としては初の単著となる『あのひとは蜘蛛を潰せない』を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
554
彩瀬さんの作品を読み終わるたびに、両手を広げて「うぅぅぅわぁぁぁ」って叫びたくなる。すっごく元気になる。今、恋をしてるあなたもそうでないあなたも、元気ないあなたもそうでないあなたも、ぜひ読んでみて。あぁ、パンケーキが食べたい(*ˊૢᵕˋૢ*)2017/01/29
文庫フリーク@灯れ松明の火
320
歳を重ねて柔軟に対応できる部分・経験則から対応できる部分・そして嫌になるほど頑なな部分を持つ自分がいる。錦糸町の雑居ビルと『深海魚』という映画でリンクする連作短編集。物語としては「龍を見送る」が好きだけれど、心を持って行かれたのは巻末・書下ろしの「塔は崩れ、食事は止まず」40代後半で転職した私。ハローワーク通いの日々は書類選考だけで落とされる日々。高望みした訳でもなく、更に給与も待遇も希望下げて、猶、刎ねられれば自尊心すら潰れる。まるで世間から「お前など不要だ」と突き付けられるようで。「こんな美味しい→続2015/06/14
❁かな❁
265
お気に入りの彩瀬まるさんの作品を読むのは3作目。今回もとても良かった〜♪5編の短編集。登場人物達はそれぞれいろんな思いを抱え、一生懸命頑張っていても上手くいかなかったりして苦しんでいる。苦しいのは自分だけではないんだな、前向きに頑張らなくちゃと前向きになれた!どのお話も一歩踏み出していて読後感がいいです★ウツミマコトの『深海魚』気になるー!特にお気に入りは『龍を見送る』。とても良かったです☆後『七番目の神様』のラストがめっちゃ好き♪思わずガッツポーズしたくなる感じ(笑)彩瀬まるさん更に大好きになりました♡2014/09/15
ちはや@灯れ松明の火
255
黄金色の生地になめらかなクリーム挟んできらきらの果物を飾った宝物みたいなパンケーキ、フォークで突き崩す瞬間が怖かった。思い描いた理想と現実の乖離に目と耳を塞ぎ、声を飲み込む。同じものを見ても違った感慨を抱いて、でもどこかが似通っていて、そばにいると気づかずに今日も雑居ビルの中それぞれ仕事に励んでいる。そっと差し入れたフォーク、断面から覗く本音と後悔。頬ばれば浮かんでくる、あの人の傷ついた顔、やっと言えたことば。壊して、また作って。口から体の隅まで拡がる神様がくれたケーキの甘み。また明日も、歩いていこう。 2015/08/09
おしゃべりメガネ
232
彩瀬さん作品2作目にチャレンジで、前回読んだ『桜の下~』が正直、悪くはないけど自分の中でもボヤけた印象が残ってしまったので、気を取り直して?本作にのぞみました。結果は期待を裏切るコトのない、しっかりとした作りの連作集で、それぞれの話が微妙につながりを保っていく作風に、すっかりとりこまれました。ある雑居ビルでそれぞれの店舗や立場の異なった人々が織りなす、本当に何気ない一場面を自然に、サラッと描いています。そんなさりげなさの中にも悲しみあり、優しさあり、そして救いありと温かみの残るステキな仕上がりでした。2015/07/19