内容説明
憧れだったはずの仕事を辞め、前に進めなくなってしまった明日香の前に現れたのは、アパートの塀の上にいるサビ猫の「ぶーさん」だった。ある日ぶーさんが病気になったと訴える少女の話を聞いた明日香は、行きがかり上、動物病院へ連れていくことになった。その古びた動物病院で思いがけず、ぶーさんは明日香の人生を変えることになる。そして数年後、お別れの時が訪れた。(「ぶーさん」より)友人で、家族で、パートナー。私たちにとって、かけがえのない存在であるペットたち。彼らとの出会いとお別れ、幸せを描く、4つの感動の物語。
著者等紹介
泉ゆたか[イズミユタカ]
1982年神奈川県逗子市生まれ。早稲田大学卒業、同大学院修士課程修了。2016年に『お師匠さま、整いました!』で第11回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。’19年に『髪結百花』が第1回日本歴史時代作家協会賞新人賞、第2回細谷正充賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
164
数日前に友人宅のペットが闘病の末に亡くなった。家族の一員として賢かった彼を思い出した。本作は小さな動物病院が繋がりの連作短編4話。野良ちゃんだった猫との話から始まり、大きくなったミニブタ、手放した犬、そしてラストは再び家猫。どれも死に直面した家族の話でもあった。悲しい別れはどうしても切ない。同時に温かな思い出も伝わるし、厳しさも伝わる。当たり前の事だがそこにあるのは『命』だ。「獣医が最後に出来ることは、お別れの時間をちゃんと作ってあげることが大事なんだ」その動物病院の獣医師の言った言葉が心に残る。2023/06/08
モルク
91
ペットとの別れ。命あるものの性、必ずその時は来る。ペットとの出会い、慈しみ癒され彼らなしではいられない日々、そして訪れる別れの日、動物病院の涙もろい情深い医師、小学校低学年らしい女の子が共通項として出てくる連作。平均15年ほどの寿命、最後まで責任をもって飼えるとして保護施設などは飼い主の制限年齢を60才なり65才までとしているところが多い。ただかわいい、愛すべき存在というだけではなく、見取りまできっちりする覚悟と責任が必要なのだ。それにしてもいくら覚悟していたからといってやはり別れは辛い。涙、ただ涙…2024/12/21
はる
79
愛するペットを見送るとき…を描いた4つの物語。もっとふわっとした、安易な「泣かせ」の物語ではと警戒しましたが、優しさの中にも「生き物を飼う」ということの厳しさと難しさをきちんと描いた、とても真摯な物語でした。特に終盤のエピソードは苦しく、厳しい現実が描かれますが、それでもペットが飼い主に与えてくれる代えがたい幸福を読者に感じさせてくれます。ペットと飼い主のやりとりがとてもリアルで、まるで自分のことのように物語に引き込まれました。色々と考えさせられる、おすすめの作品。2023/07/05
Ikutan
74
ペットを飼えば避けられないのが、悲しいお別れ。そんなお別れの場面を描いた四つの物語。保護してくれた明日香と1年9ヶ月暮らした元のら猫の『ぶーさん』。不登校の紗良の元にやって来たミニブタの『サクラちゃん』。人間の都合に振り回されて暴君になってしまったチワワの『リリー(クッキー)』。そしてアメリカショートヘアの『タタン』。「僕がしてあげられる最後の仕事は、命を救うことではなく、時間を稼ぐことなんだ」。全話に登場するのは、泣き虫な獣医とツインテールの女の子。命に向き合うことの責任の重さも伝えてくれる優しい物語。2023/08/10
ミーママ
57
図書館の本📚️ 初めての作家さん! 本当に家族になって最後おくる。私の所にも4匹の猫が居るが本を読みながらいろんな事を考えた。辛いけどいつかは・・・ 2023-652023/05/14