出版社内容情報
小児脱毛症を患った小学生の女子と、女性棋士の道を諦めた女性を視点人物に、将棋の魅力と、生きることの意味を描く、成長小説。
内容説明
小学6年生の橘玻璃は、少し前から小児脱毛症を患っている。慣れないウィッグはかゆみと違和感、友人にバレるのではという不安でいっぱいだ。そんな矢先、将棋部に属するハルは「Hu・cafe」という将棋の指せるカフェを近所で見つけ、店主の夕子さんの人柄に惹かれるようになる。女流棋士として活躍していた夕子さんは、訳あって引退し、カフェを開いたというのだが…大人への階段を上り始めた少女が、将棋と向き合い、悩みや苦しみを受け止めてゆく様をみずみずしく描く成長小説。
著者等紹介
尾〓英子[オザキエイコ]
1978年、大阪府生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。2013年『小さいおじさん』(文庫版は『私たちの願いは、いつも。』と改題)で第15回ボイルドエッグズ新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆみねこ
75
尾崎英子さん、初読み。読み友さんの感想から手に。小児脱毛症に悩む小6のハルと女流棋士を引退してカフェを営む夕子。将棋のことは門外漢ですが二人の交流が素敵で読み心地は良かったです。児童書。2020/11/04
konoha
62
小児脱毛症でウィッグをつける小学生のハルは夕子が営む将棋カフェに通うようになる。ハルも夕子も葛藤しながら成長していく。柔らかく優しい文章で読みやすい。2人の交流か将棋どちらかに焦点を絞っても良かった。小児脱毛症については馴染みがないので唐突な気がした。作者の経験から選んだテーマらしい。将棋と小説は相性がいい。相手が強いからじゃなく、自分が弱いから負ける。将棋に人生を重ねた言葉がぐっとくる。ハルと夕子が出会う場面が印象的。81マスの世界に夢を見る人たちのひたむきさ。将棋ができるってかっこいい。2022/09/13
けんとまん1007
59
二つのものがたりが、お互いに響きあいながら進んでいく。小学生の女の子と、30歳の女性。将棋をモチーフに、変化の過程が、ゆるやかに描かれていく。やはり、人は出会いの中で生きる生き物なのだと再認識。もちろん、その出会いで、何をどう感じ取るのか・・。将棋の駒は、それぞれ特徴があるし、全体の中でどう意味合いを持つのか。好み、つまり、ものの考え方も含め、変わっていく。2021/10/01
ぶんこ
57
小児脱毛症の小6のハル。離婚して母子家庭になった母を悲しませたくないと気遣ったり、ウイッグが親友にもバレないかと気にする毎日。塾に行きたくない日、近所のカフェが気になって見ていると店主に誘われて中へ。「Hu・cafe」とは将棋の「歩」。店主夕子は元女流棋士2段。夕子さんに導かれるように初心者に近かったハルが、手元ばかり見ないで道の先を見通せるようにと教わる。ちょうど藤井4冠が王将戦に勝って5冠となった翌日読む。棋士の世界は常に勝負の世界と思うと、ため息しか出ない。ハルの成長に一喜一憂。面白かったです。2022/02/13
kei302
53
飛車も桂馬も格好いいけど、強くて自由な歩がいいな。読み終えてそう思った。ハルの心情描写が痛いほど伝わってくるのは著者の尾崎さんが病気治療の副作用でウイッグ生活を経験されているから。私も円形脱毛症経験者。マジックで塗って・・と思った。 2020/04/21