出版社内容情報
不浄な「首斬り人」と蔑まれる生業を祖父、父から継いだ別所龍玄。五尺五寸足らずの凄腕介錯人の清冽な生き様を描く、作者の新境地!
内容説明
不浄な「首斬人」と蔑まれる生業を継いだ別所龍玄。父に代わって首打役の手代わりを始めたのは十八の春であった。親子三代の中で一番の腕利きとなった彼の元には、外には出せないお家の事情を抱える武家から、武士が屠腹するときの介添役を依頼されるようになる。凄惨な生業の傍ら、湯島無縁坂での穏やかな家族との日々。凛として命と向き合う、若き凄腕介錯人の矜持。
著者等紹介
辻堂魁[ツジドウカイ]
1948年高知県生まれ。出版社勤務を経て執筆活動に専念。迫真の剣戟と人間の機微を濃やかに描く作風で、人気作家となる。大ベストセラー「風の市兵衛」シリーズで、歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
182
辻堂作品は久しぶり。カバーとタイトルに惹かれて。連作4話。どれも好い。介錯人・別所龍玄がとにかく好い。中でも幼い頃の約束を守った話は響く。生業とは違う意味で、斬る者・龍玄が愛おしくもあった。龍玄の妻子も好ましいし、母・静江の存在も好きだ。同心・本条とのやり取りも好み。要するに全部好きだったのだ。『ささやかだがゆるぎない、卑小だが果てしない、不浄だが清々しい』まさに龍玄のことだ。これはもう続きも読みたい。2019/03/16
ケンイチミズバ
121
タトゥーありはNG。できものや傷もNG。その体は美しくなくてはならない。高貴な姫君の縁談がまとまり、輿入れ道具の一つに徳川由来の名刀が。所詮は小刀だが鑑定書をしたためるため試し切りが必要になる。明次は生贄であり、親孝行で腕の良い職人は日頃の節制で引き締まった体が衆目の中での試し切りには申し分ない。儀式の場で初めてめぐり逢い、その死に深くかかわってきた介錯人、首斬り人は咎人にどのような事情があろうとお役目を果たして来たが。龍玄を前に音は消え、一太刀であっけないほどに散り椿となった人たちも納得するかのように。2019/05/08
とし
94
罪人の首打、切腹の介錯,刀のお試し鑑定をとする生業とする別所龍玄の物語。世間や廻りからとやかく言われようが、己の与えられた仕事に誇りをもち、情けや同情、様々な葛藤を乗り越え無心に刀を振り下ろす、凄い精神力と清々しさを感じますね。2019/10/02
buchipanda3
72
介錯人としての矜持を持ち、首斬りを生業とする別所龍玄を描いた連作時代小説。若いながらも彼の凛然たる振る舞いが魅力的で、それにより醸し出される静謐で張り詰めた空気感に浸りながら4篇の哀しい物語を堪能した。どの話も理不尽極まりない出来事が語られる。その犠牲に晒された人物の無念さは胸を裂くように痛々しい。その辛い思いを龍玄の見事な太刀さばきによって解放されるところに、切ないながらも安堵の心地よさがあった。妻と愛娘との日々のやり取りの微笑ましさ。生と死の両方で慈愛溢れる心を見せる龍玄。彼の活躍をもっと読みたい。2019/03/17
kei302
46
“市兵衛シリーズに登場する敵役にして、凄腕の介錯人・別所龍玄の清冽な生き様を描く”と10年前に華々しく登場した別所龍玄。辻堂さんの作品は読みたいけど、市兵衛は途中から追わなくなったし、そんな今日この頃、シリーズ最新刊が出たので介錯人シリーズを読み始めました。龍玄の生き様の潔さ・仕事の厳しさとのバランスを取るような家庭内の温かさがとてもよいです。杏子あんずちゃんが可愛い、妻さんもよいし、母もステキ。時代小説作家さんで子どもと女性を描かせたら辻堂さんが一番巧いのではないかと思っております。2025/08/30