内容説明
敗色濃厚となった太平洋戦争末期、大阪の旧家のいとはん・橘トシ子は国民学校の教師となる。栄養不足で教え子たちが次々と命を落とす中、少ない燃料と穀物で大量のポン菓子を作れる機械の存在を知る。トシ子はその機械の製造工場を立ち上げようと“鉄の町”北九州へ、一人乗り込むが…。人々を飢えから救い、復員兵に職を与えた実在する女性の奮闘の半生を描く。
目次
プロローグ
エピローグ 修造さんへの手紙
著者等紹介
歌川たいじ[ウタガワタイジ]
1966年東京都生まれ。2010年『じりラブ』でデビュー。自らの生い立ちを記した『母さんがどんなに僕を嫌いでも』が映画化されるなど話題を呼び、その後も作品を次々と発表。年齢層や性別を問わず、幅広い読者に支持されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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エドワード
24
米や雑穀を十倍以上に膨らますポン菓子を知っていますか。私の父の世代、戦後の物不足の時代を生きた人には懐かしい味だ。正式には穀類膨張機というアメリカ製の機械を日本で初めて製造した実話に基づく物語。大阪南郊で教師を務める橘トシ子は、太平洋戦争で空襲を受けた大阪で、食糧難に苦しむ人々、特に子供のためにポン菓子の製造を思いつく。彼女は工具や図面を自在に操るリケ女の先駆者だ。鉄を求めて北九州へ行き、職工たちの信頼を得、最後に日本製鉄の社主の理解を得る。ドラマティックな彼女の軌跡から、戦争の理不尽さが伝わってくる。2023/08/29
陽ちゃん
5
ポン菓子製造機が、戦時中に大阪の若い女性の「子どもたちに食糧を食べさせたい」という強い思いから生まれたとは知りませんでした。大阪の旧家のいとはんだったトシ子が、鉄が手に入るという理由で単身、北九州の戸畑へ移住し、最終的に地元の職人や女性たちを巻き込んでポン菓子製造機完成にこぎつけるまでには、書かれている以上のご苦労があったんでしょうね。お陰で、平和な現在も美味しいポン菓子がいただけることに感謝しなくちゃ、と思います。2023/08/11
まゆこ
3
★★★☆☆2023/09/15