内容説明
二十年前、中央医科大学の解剖学実習で組まれた女性だけの班―長谷川仁美、坂東早紀、椎名涼子、安蘭恵子の四人は、城之内泰子教授の指導のもと優秀な成績で卒業しそれぞれの道を歩んできた。順調に見えるキャリアの裏には、女性ゆえの苦労もある。人生の転機を迎えた彼女たちに、退官する泰子が告げる驚きの事実とは?今こそ読まれるべき珠玉の人間ドラマ!
著者等紹介
南杏子[ミナミキョウコ]
1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入し、卒業後、慶應義塾大学病院老年内科や高齢者専門病院で勤務する。2016年『サイレント・ブレス』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆいまある
91
女性医師4人の物語。サクサク読める。女であることで出世出来なかったり、育児や介護との両立に悩んだり、ありきたりな内容。出世したいなら生理休暇取るな、婦人科行け。家事や育児を自分の仕事と思うな。割り切れ。人に頼め。激務と両立できんから。私女性医師だけど、差別された記憶は無いんだよな。出産は大変だったけど。教授も上司も女だけど、ちゃんと尊敬されてた。この人達、女だからってよりも真面目で頭硬いからうまくいかなかったんじゃないの?対立するより、子育てはみんなの課題だから、産んだ人一人に負わせない世の中にしたい。2023/11/23
ふじさん
90
城之内泰子教授の解剖学実習で女性だけの班に入った4人の女性の歩んだ人生を通して、女性医師ゆえの苦労や辛苦が綴られた珠玉の人間ドラマ。世界で初めて医師として認められたブラックウェルの語った言葉と共に、今の医学界における女性医師の置かれた現実が腹立たしいと同時に残念と言わざるを得ない。不正入試や超過労働等、医学界の現状は難しい問題が山積するが、何とかならないのかと切実に思う。せめても救いは、多くの困難がある中で、4人の女医と泰子が、次のステップへ強い気持ちで歩む出そうとしている姿だ。勇気を貰えた気がする。 2025/05/11
のんちゃん
41
中央医科大学初の女性教授の泰子は、20年前、自身の担当する解剖学での教え子の女性4人が忘れられない。そこにはある秘密があった。この4人の女性医師➕泰子が語り部となって、現在と20年前が語られる。4人は現在、其々に問題を抱えていた。医師という専門職に就きながらも男性優位社会、介護、夫との関係等に悩まされる彼女らを、現役女性医師である作者は問題を深掘りしながらも温かい目で描く。世の中は随分前から女性参画社会を謳ってきた。ならばその土俵は万人にフラットであるべきだと思う。その理想には精神構造改革が必要だ。2023/02/13
エドワード
38
大学の医学部不正入試事件は記憶にある。高得点の女子を落とし、低得点の男子を合格させる。最初から男女の合格者数は決まっている。何故操作をするのか。それは偏見からだ。女子は男子より劣る。連綿と続く<伝統的偏見>。大学病院の解剖学実習で4名とも女子のチームを組んだ女性たち、眼科医の長谷川仁美、循環器内科医の坂東早紀、救急医の椎名涼子、新生児科医の安蘭恵子。全員が現場で偏見と戦っている。周りは敵しかいない。心も身体もボロボロになり、それでも違う医療の現場へ赴く彼女たち。この国の男女共同参画社会はまだまだ遠い。2023/04/04
カブ
37
現役医師でもある南杏子氏の医療ものは、物語としてだけでなく医療現場の話としても面白い。本作は4人の女性医師について書かれているが、優秀であっても女性ゆえの苦労が付きまとう。それでも諦めずにキャリアを積んでいく彼女たちを応援したくなる。2023/02/08
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- 詩羽のいる街 角川文庫