内容説明
離婚し子供たちと引き離され、金銭的に困窮した藍は、祖母と母のいる実家に戻る。生活力もなく喧嘩の絶えない藍たちに手を差し伸べたのは、隣に住む美代子だった。祖父を介護して暮らしているという美代子に助けられ親しくなるうち、彼女のある秘密が知れる…。貧困、ケア、孤独。背負わされる業と役割に、女たちはどう抗えるというのか。迫真と驚愕の犯罪小説。
著者等紹介
原田ひ香[ハラダヒカ]
1970年神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ脚本懸賞公募(現・創作ラジオドラマ大賞)の最優秀作を受賞。’07年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。’22年『三千円の使いかた』が大ヒット、『一橋桐子(76)の犯罪日記』がNHKでドラマ化される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
93
醜悪でエゴにまみれた人物だらけの驚愕と迫真の犯罪小説。離婚し金銭的に困窮した藍は、奔放で恋人を代える母親の孝子と貧乏暮らしが染みつきがめつい祖母のヤスがいる実家に戻る。生活力がなく喧嘩続く家族に手を差し伸べたが、隣人の美代子だった。老人介護に明け暮れる美代子には、ある秘密があった。訳ありな登場人物ばかりで、読んでいて腹が立つことが多いが、原田ひ香の巧みな文体が、闇の奥のそのまた奥を、垣間見る力を与えてくれる。貧困、ヤングケアラー、年金不正受給、孤独等にどう向き合うのか突きつけられる内容、読んでいて辛い。2025/01/18
のり
86
離婚を機に母娘三世代で暮らす事になった「藍」だが、祖母と母親の折り合いが悪く、さらに金銭的にも悩まされる。しかし隣人で祖父の介護をして暮らす「美代子」には何かと助けられる。しばらく疎遠であったが、二人の仲は深まっていったが、ある出来事を境に裏の顔をみてしまう。そこからは想像を絶する理解不能な展開へと…苦しい事情があるのはわかるが、共感出来る者は皆無だった。2023/11/21
アッシュ姉
83
介護貧困の闇。こ、これは、なかなかの衝撃。いろいろ持っていかれそうで丸一日あいだを空けたり、読み進めるのが怖くもあったけど、そこは原田ひ香さんの吸引力で最後まで見届けずにはいられなかった。タイトルが秀逸。読書中何度も頷かされたタイトルだった。2023/07/13
小説を最初に書いた人にありがとう
78
自分の不倫が原因で離婚して子供とも離れた主人公の藍は収入もなく経済的に厳しい生活を送っている。実家には祖母と母親の孝子が困窮からか喧嘩の絶えない生活を送っている。仕方なく実家に戻った藍は隣家に住む美代子と再会するが、そこから驚きの展開に巻き込まれていく。生活に窮したことで犯罪に手を染めなくてはいけなくなる社会をデフォルメしたような小説。途中、ホラー要素があり読み進めるのにも苦労したが突き抜けた展開に何故か笑けてしまうのが不思議。金で人生や世の中が狂う怖さを痛感。そうか、DRYとはそういう意味なのか!?2023/03/19
yukaring
72
読み終わった後にタイトル『DRY』が強烈な意味を持つ衝撃のダークサスペンス。主人公の藍は離婚して子供と離れ実家に戻るが、自分勝手でクセの強い母と祖母、女3人のケンカが絶えない荒んだ日々。唯一藍達を気にかけてくれるのは隣人の美代子だけ。寝たきりの祖父の介護をこなす孝行娘の美代子には実は秘密がありそれを知った藍は・・。貧困や介護、社会制度の奥に潜む闇や報われない現実、どこにでもいる普通の人々が簡単に闇に墜ちていくリアルさには背筋がゾッとする。そしてはっきり描かれない最後の藍の選択は心あるものだったと信じたい。2023/01/11
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- 和書
- 撮影監督高村倉太郎