内容説明
城石明音は先天性の心疾患を患っていた。八歳の時に悪化し、両親は米国での心臓移植手術を決断する。募金活動により一億五千万円という莫大な費用を集め、明音は一命を取り留めたが、帰国した明音を待っていたのは、幸福だけではなかった。恨み、嫉妬、同情、愛情、様々な思いを抱えた人々が明音の人生を動かしていく。そして―。骨太の社会派エンターテインメント!
著者等紹介
乾ルカ[イヌイルカ]
1970年北海道札幌市生まれ。2006年に短編「夏光」で第86回オール讀物新人賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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相田うえお
76
★★★★☆23059【心音 (乾 ルカさん)k】人生の分岐点でどんな選択をしたとしても何かしらの歪みが生じてしまうこともある。険しい道であろうとも、行き着く先に何があろうとも、たとえ本人がわるい訳ではなくとも、逃げずに進んで行かねばならないこともある。。。本作品は命と死という人間に課せられた難題がテーマだったのだと思う。とても考えさせられた。登場する人物の誰にも肩入れすることなく中立の立場で読んでいたつもりだが、やはり最後には主人公の気持ちに寄り添ってしまった。これは名作かもしれない。オススメの一冊だ。2023/09/20
タルシル📖ヨムノスキー
26
心臓移植と聞くとまず頭に浮かぶのが医療技術の進歩。そして移植に成功したレシピエントの明るい未来。心臓移植は果たして幸せな未来をもたらすのか?移植を待ち望んでいる患者とその家族にとっては愚問かもしれないが…。この物語の主人公・城石明音は先天性の心疾患を患い、寄付を募って渡米し、心臓移植を受けた女性。とにかくいろんな立場の人たちの気持ちについて考えさせられる物語でした。明音が最後に見出した「自分が生きる意味」とは?連作短編形式ですが、どのエピソードもとにかく切ない。中盤に一瞬だけ見える「幸せな生活」でさえ…。2024/01/10
丸々ころりん
15
先天性心疾患を患っていた明音 募金活動でアメリカでの移植手術が叶う。帰国後待っていたのは他人の死で自分の幸せを得たという誹謗中傷。母は常に笑顔•前向きでいる事が支援してくれた方への恩返しだと言う。 同時期に移植出来ずに亡くなった子の親が暴漢と化す 大事にもせず生活させる母。確かに感謝の気持ちは大切だが,恐怖•怒りを押し込めながら成長して人としての喜怒哀楽を感じる事なく大人になった明音には同情しか無い。命を頂いたその後を考えさせられる何度も読み返す 作品です。2022/08/01
lily
9
「下を向くより、心に背いて笑う方が比べ物にならないほど辛いのだと、思い知りました」一億五千万円の費用をかけて海外での心臓移植に成功した城石明音の半生。かけがえのない命が救われたとする美談の裏側で世間から発せられる罵声や蔑み。ヤフコメ欄を地で行く本音に苦しめられる明音にとって、「高い金で命拾いしたんだから前向きに生きろ」と宿命づけられているように映るのだという。自分の人生を奏でていくことを決めたラストには光明が見えたが、明音を取り巻く環境が不運に導かれすぎているようで非現実的かな…。2025/05/23
こばゆみ
9
うーむ、、、読後感があまり良くない(-_-;)。心臓移植を受けた少女の、その後の人生を描いたお話。それがまー不幸続きというか、移植自体しんどいのに、更にそんなにつらい思いして生きなきゃいけないの?っていう…それが本人の性格や行動に起因するものならまだしも、周りの人たちの悪意によるものだから、尚更しんどい… 単純な疑問として、移植を受けた人につらく当たる人って、そんなに多いものなのかなぁ…2022/08/16