内容説明
都心まで一時間半の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘。二十年ほど前に連続殺人事件があったきりののどかな町だが、二週間前の放火殺人以来、不穏な気配が。そんななか、町いちばんの名家の当主・箕作ハツエがひったくりにあった。辛夷ヶ丘警察署生活安全課の砂井三琴は相棒と共に捜査に向かうが…。悪人ばかりの町を舞台にした毒気たっぷりの連作ミステリー!
著者等紹介
若竹七海[ワカタケナナミ]
東京生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、連作短編集『ぼくのミステリな日常』でデビュー。以降、青春ミステリから歴史ミステリ、ホラーまで幅広いジャンルで、多彩な作品を発表。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞“短編部門”を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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麦ちゃんの下僕
174
多摩丘陵にある寂れたベッドタウン「辛夷(こぶし)ヶ丘市」を舞台に、警察官を含め登場する人物が全員悪人(!?)という“ダーク・コメディ・ミステリ”連作短編集。6編全て女性が語り手であり、その内2編の語り手である辛夷ヶ丘署生活安全課の警察官「砂井三琴」が、唯一全編に登場する人物としてこの作品のキーパーソンになっています。結婚式でのドタバタを描いた「黒い袖」はかなり笑えますが…「きれいごとじゃない」「葬儀の裏で」のオチには戦慄。若竹さんは初読みでしたが、噂の“毒気”は効きますね…辛夷ヶ丘市には絶対住みたくない!2022/05/07
mihya
60
連作短編集。最初は、辛夷ヶ丘警察署生活安全課の悪徳職員のバディもの?最後までこの調子なら飽きるかも…などと思ったんだが、そんなんじゃなかった。出て来る人、全員が悪人。殆どの人に多少のエゴはあるだろうが、そのエゴが振り切れちゃった人ばかり。ここまで来ると笑える。全体通してブラックで、半笑いのまま凍りつく。 「黒い袖」のドタバタ感が好き。表題作「殺人鬼がもう一人」のラストも良い。 2024/03/15
オーウェン
57
最果ての署にいる見た目がバラバラな砂井と田中盛。二人が担当するのは生活安全課だが、暇なので殺人事件も担当に。6編の連作集だが、大まかにつながっているのは1章と6章。町にはびこるハッピーデー・キラーが絡む。事件の解決の仕方が独特で、砂井の詰め寄り方が徐々に本領を発揮していくのが圧巻だし、章によっては語り手が終盤別の顔を見せ始めて驚く。会話の中でのユーモアもふんだんだが、ブラックな中身が突然飛び出してくるのも仰け反る。1つも外れがない話というのも珍しいが、ある意味イヤミスのような中身だけど楽しめました。2025/05/28
Kanonlicht
49
東京郊外の架空の街を舞台にしたブラックコメディ感たっぷりのミステリー短編集。街の警察署の生活安全課捜査員を中心に、数々の事件の顛末が描かれる。高齢化が進むのどかなベッドタウンという仮面の下には、連続殺人や放火、ひったくりなど物騒な事件が頻発する裏の顔があり、そこで暮らす住民たちも一見善良な市民に見えて…。ほのぼのと面白おかしく書かれているけれど、どこか背筋が寒くなるのは、さすがにこんなことはないでしょ、と笑い飛ばすことができないから。犯罪そのものよりも、悪気がないのが一番怖い。2023/11/14
ピース
41
場所は東京の辛夷ヶ丘の警察署。そこの生安課の砂井三琴と田中盛の凸凹コンビのコミカルな話かと思ったらちょっと違う。シリアスな話ばかりで結論というかオチはボカされてる。中でも最後の表題作のクライアントは誰だったんだろうか。2022/10/31