出版社内容情報
平成30年間の社会や文化の変化を描きながら、児童虐待、無戸籍児と、現代社会の問題に迫る、クライムノベルの決定版。
内容説明
平成一五年に発生した一家殺人事件。最有力容疑者である次女は薬物の過剰摂取のため浴室で死亡。事件は迷宮入りした。時は流れ、平成三一年四月、桜ヶ丘署の奥貫綾乃は「多摩ニュータウン男女二人殺害事件」の捜査に加わることに。二つの事件にはつながりが…!?平成という時代を描きながら、さまざまな社会問題にも斬り込んだ、社会派ミステリーの傑作!
著者等紹介
葉真中顕[ハマナカアキ]
1976年東京都生まれ。2013年、『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、デビュー。第2作『絶叫』は第36回吉川英治文学新人賞、第68回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)の候補となり、大きな話題を呼ぶ。’19年、『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
81
やっぱり面白い。そして切なくドラマチック。酸鼻をきわめる一家殺人事件。犯人は引きこもっていたその家の娘と見せかけて、戸籍のない少年が母親に命ぜられるままに行ったものだった。政治家一族の血を引き、警察の捜査が届かない所にいる少年ブルー。やがて彼は自分と同じく虐待された子供を救う為にその親を殺してしまう。セイフティネットから零れる人々を今回もまた実によく捉えてる。このリアリティが葉真中さん。根底には鋼のような怒りがある文体。この人も何かに傷つきながら育ったのではないかな。写真。多分宮古島だと思うんだよなー。2023/10/08
アッシュ姉
80
表紙もさることながら、鮮烈なインパクトを残す葉真中さんの長編大作。持ち歩いて読むには手に重く、内容も重たく、ずしりと心に残る。平成の始まりに生まれて、平成の終わりに亡くなったブルーと呼ばれた男の子。時代背景を振り返りつつ、彼の軌跡に思いを馳せながら読んだ。彼を責めることなどできない。奥貫のパートが辛かったと思ったら、『絶叫』の登場人物とのこと。すっかり忘れていたので是非再読したい。2023/03/09
オーウェン
70
平成15年に起きた一家惨殺事件。犯人はその後風呂場で急死した娘の夏希と断定される。担当した藤崎刑事は夏希に隠し子がいることを知り、その子がブルーと名付けられていることを知る。この事件はブルーの誕生とともに始まり、平成の終わりまでを総括する中身で占められる。平成の歌だったり事件がその都度出てきて、刑事たちやブルーに関わる日本人や外国人の人生が炙りだされる。ブルーの行動は最小限にしか描かれない。その分刑事たちや関係者の証言や、推理の過程で正体が分かって来る。結局ブルーの人生が報われたのかどうか。2024/11/29
ミステリにゃん
53
長編だがその分厚さを感じさせない位にいくつか視点を変えて話しが進んで行くので気がつくとかなり読み進めており長編苦手でもこれなら読めてしまうかもしれない。 平成という時代を思う存分織り込んだ一冊でミステリーというよりも社会派の趣が強い。 スピード感を持って読んだ方がより楽しめるかと。最後もったいぶって間を置いて失敗したなと思ったので。 「絶叫」の方がより好みだったが好きな作家さんなので今後も楽しみである。2022/08/29
綾@新潮部
49
社会派ミステリーって書いてあったので好きなタイプの話だろうなぁと思ってたら、やっぱり好みの話で一気読みだった。児童虐待、貧困、外国人の雇用状況などが殺人事件の捜査において浮き彫りになっていく。「ザ・平成」のように平成時代の話なので懐かしさもところどころにはあったが、全体的には重くて暗い話。ただ、これが小説の中だけの話ではないところ、無戸籍や学校に行ったことのない子供たちの数の多さに驚く。以前よりは支援なども手厚くなっているにしてもそれを知らない人も多いと聞く。この作品からも負の連鎖を感じた。2022/05/04
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- 和書
- 龍秘御天歌 文春文庫