出版社内容情報
藤兵衛を助ける旗本釜木進一郎、足をひっぱる悪同心。無気味な寺僧や大奥の女たちを配して江戸を舞台にくりひろげる長篇時代推理小説
内容説明
夜釣りに出た船頭と客が、死体になって百本杭に流れ着いた。泳ぎ達者な船頭が溺死したのが腑に落ちず、岡っ引の藤兵衛が水の下を捜してみると、贅沢な誂えの煙管が見つかる。調べを進めるが、同心の川島正三郎から、一件から手を引くように言い渡されてしまい―。将軍家慶の時代を舞台に、出世と賄賂に翻弄された人々を描く、傑作時代推理小説登場!
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年北九州市生まれ。様々な職業を経て、朝日新聞西部本社に入社。懸賞小説に応募入選した「西郷札」が直木賞候補となり、’53年に「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。’58年に刊行された『点と線』は、推理小説界に「社会派」の新風を呼び、空前の松本清張ブームを招来した。’92年に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kira
13
図書館本。松本清張氏の長編を読むのは初めて。本書は時代ミステリで、徳川家斉が大御所として実権を握り続けた時代が背景。冒頭から遺体が二つ流れつき、話の展開が早くてページをめくる手が止まらないほど面白かった。さすが、昭和の人気作家だと実感した。これを機に、他の作品も読みたい。2022/07/04
ファーラス
10
1965年の雑誌掲載が初出。文量のわりに書籍化は遅く1984年が書籍刊行の初。『点と線』『壁の眼』が当たるまでは元々歴史小説を書いていた筆者の、時代小説×社会派ミステリ。キャリアの総決算となるか半端なものとなるかで言えば後者に近い、まだ迷走が見える時期の作品。正直、科学捜査やそれを見越した隠蔽が一切ないと言える江戸時代・岡っ引きのミステリで350頁級は間が持たない。現代なら短篇で刊行される事件だろう。ただ、筆者が現代物で捨て置いたキャラ性に対し、岡っ引きたちのキャラ性は色気と人情味があふれ読み進めやすい。2024/04/05
Kotaro Nagai
9
本書は1965年雑誌「潮」に掲載された時代作品。天保11年5月、隅田川で夜釣りの客が船頭と殺される事件があり、ベテランの岡っ引き藤兵衛が捜査に乗り出すが、途中で上から手を引くように強要される。そこから幕府の闇の部分を垣間見る。。。語り口の巧さが光る良作ですが、旗本の釜木進一郎の協力を得てこれから巨悪に迫るのかと思ったが結末はやや尻すぼみ感が。無理やり終わらせた感じでもったいない気がする。中村梅雀あたりでドラマ化すると面白いかも。2023/04/29
ランラン
9
江戸時代に遡った設定でなかなか興味津々だった。権力を持つ者の圧力が大きいことは今も昔も変わらない。2022/07/17
富士山
3
犯罪を揉み消そうとする権力者と、それに立ち向かう警察組織の下っ端。@江戸時代。江戸の警察組織はややこしい。主人公は、同心の元で事件を捜査する岡っ引きなので正確には奉行所の配下ではなく、同心が私的に雇う私立探偵みたいなものらしい。毛利小五郎的な感じかな。2022/08/11