出版社内容情報
往年の探偵たちが復活! 第三弾は久生十蘭。多彩な著作の中から、探偵、推理小説をセレクション。
内容説明
男は父の命令でイギリスに留学し、巴里に移ったところで陸軍士官と決闘する羽目になる。撃たれた顔は異様な有様となった。帰国後、湯治に訪れた箱根で出会った少女に一目惚れするが、その思いを隠して結婚したために、二人の気持ちはすれ違ったまま。ついには―。(「湖畔」)多彩なジャンルに縦横無尽の活躍を見せた作家の、奇想天外なミステリ作品集が登場!
著者等紹介
久生十蘭[ヒサオジュウラン]
1902(明治35)年北海道生まれ。東京の聖学院中学中退後、故郷に戻って函館新聞社に入社。1928(昭和3)年、新聞社を退社して上京し、岸田國士に師事。翌年、演劇研究のためにパリに渡り、パリ市立技芸学校で学ぶ。1933年、同校を卒業して帰国。同郷の後輩の水谷準が編集長を務める「新青年」に翻訳、ユーモア小説、著名人インタビューなどを寄稿。1936年のミステリ長篇『金狼』から久生十蘭のペンネームを主に使用する。1952年「鈴木主水」で第26回直木賞を受賞。1955年吉田健一の英訳した「母子像」でニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙主催の第2回国際短篇小説コンクール第一席に入選。1957年10月、食道癌のため死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Kotaro Nagai
10
本書は十蘭のミステリー系作品の短編集2分冊の一冊目。編者日下氏による既刊ちくま文庫「怪奇探偵小説傑作選3久生十蘭集ハムレット」から「母子像」と「予言」を続刊に送り、代わりに「湖畔(文芸版)」と「彼を殺したが…」を収録したもの。「彼を殺したが…」は河出文庫「十蘭錬金術」に収録済み。「湖畔(文芸)版」は、昭和12年の初出版で、文庫では初収録となる。既刊の短編集収録されている「湖畔」は昭和27年の改稿された版で、旧版と改版を読み比べることが出来る。戦後の十蘭の人物描写に重きを置いた作風をうかがい知る事が出来る。2022/03/18
鷹ぼん
7
名前は知っていたが、なかなか手が回らなかった久生十蘭だが、昨年、とある書店で複数の作家が「好きな作家」に名を挙げていたので、読んでみたら、おしゃれな文体がピタッとハマってしまう(笑)。本書は、「探偵くらぶ」と副題が付くように、ミステリー系の中編、小編が並ぶが、いずれも「さすが!」と唸らせるものばかり。代表作の『黒い手帳』『湖畔』『墓地展望亭』『ハムレット』の他、『海豹島』『地底獣国』などの「不思議系」作品も面白い。文芸版の『湖畔』、『ハムレット』の原型『刺客』も面白かった。都筑道夫の「刺客解説」も嬉しい。2023/05/21
Tatsuo Ohtaka
3
独特な文体で多彩なジャンルに名作を残した作家の、ミステリ作品集第1巻(時代小説を除く)。十蘭ファンの都筑道夫センセーによる解題も入っている豪華版。第2巻も続けて読もう。2023/04/07
ポンキッキ
2
久生十蘭作品集 特にヨーロッパに該博で、推理小説、歴史・時代小説、ユーモア小説など、守備範囲が広く、正に「鬼才」 ●『墓地展望亭』/フランス・リストニアとヨーロッパを巡る、大恋愛ミステリー、馥郁たる薫りの残る名品 映像的でもある ●『地底獣国』/ソ連の密命による地下探検隊が、未踏の大鍾乳洞を探索していく 日本の安全保障にも関わる怖いお話し 後半、映画『ジュラシックパーク』的な展開に大興奮した ●『刺客』/十蘭『ハムレット』の原型たる短編 おどろおどろしく、エロチックで繊細な作品、ほぼ「全員悪党」で戦慄する2024/09/10