出版社内容情報
貧しくて、ひもじくて、それでも歯を食いしばって生きてきた時代に迫る、「東京近江寮食堂」シリーズヒット著者の書下ろし長編!
内容説明
七十四歳の服部勇の元に、一通の手紙が届いた。「私の母のことを教えてほしい」。送り主の名前に戸惑う勇の脳裏に、少年時代の風景が浮かぶ。大津、米軍キャンプのそば、一家七人、小さな長屋の二階には、進駐軍相手のキャリーが住んでいた。貧しさとたたかう暮らしの中に起こった、ある事件―。手紙が開いた思い出の扉が、男の心にさざなみを立て、人生を変えていく。
著者等紹介
渡辺淳子[ワタナベジュンコ]
滋賀県生まれ。放送大学卒。看護師として病院・精神保健福祉センター・企業等に勤務。第3回小説宝石新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
155
戦後の昭和、平成を行き来しながら物語は進む。一家七人の服部家。その次男坊の勇が主人公。戦後、服部家の長屋の二階には、進駐軍相手の街娼(ぱんぱん)が住んでおり、奇妙な共同生活を強いれる。貧困のためになりふり構わず生き抜く姿は、逞しく美しくも感じた。勇の汽車での出来事は、心の中で応援してしまい力が入った。一方、平成では勇は兄の介護に追われる。勇は74歳。兄や北原を気にかけるあたりは、戦後の生活の経験値があったからだと思う。ラストは読者に委ねられた感じ。戦後の生活の情景が、しっかり浮かんだ物語だった。2024/05/16
相田うえお
84
★★★★☆22040【さよならは祈り 二階の女とカスタードプリン (渡辺淳子さん)】東京近江寮食堂シリーズが面白かったので他の渡辺さん作品を選んでみました。本作品、平成と戦後昭和を行き来しながら話が進行していく構成となっています。昭和セクションでは戦後の混濁した日本に生きる庶民、それも女性,子供の日々のありさまが見えてくるようでした。そして、そんな舞台で起こった出来事に感情が揺さぶられました。ジーンと。平成セクションは昭和セクションと繋がっていて、これまた心に響く話です。オススメしたくなる作品でした。2022/05/09
ゆうぴょん
3
図書館本。戦後まもない貧しい日本と、認知症の兄を見舞う平成とを行き来しつつ書かれた作品。戦後、貧しかった女性がアメリカ兵士の現地妻になっていたという話は知っていたけれど、実際は重いなぁ…。混血児を育てられなくなる母の切なさ、ホームに赤ちゃんを連れて行く主人公の大変さと。平成版での再開はあっさりなのですが、プリンはいろんな意味でキーワードになってくるのです。まぁ、ハッピーエンドなのは救いです2022/05/14
ふむ
1
戦後の生きることに必死な日本の人々が描かれていた。しかし、その空気感は戦争を知らない自分が想像するのと一緒でさらりとしたものだった。戦後はこんなものだと教科書で読むような。作者が体験してないと知っていて読んだからか。子どもが一生懸命考えて頑張った先に、葛藤があり、さらに救いがあり。本当は大人が労うべきだが、皆必死で、早く大人になってほしかったから、子ども扱いしなかった。そういう時代ではあったのかも。それに比べると、今の日本は、子どもを守り過ぎて、成長を遅らせているのかもしれない。2021/12/18
なんてひだ
0
あーそうだ、G1プリンだったよ。題名のインパクトで覚えてたよ、特に差別用語だとは思わないが、パンパンとかそうなんだろうか。とつとつと戦後のアメリカ軍がいた時代を描いているし、あまりにも日常的にあるのが響いた。日本人の生活レベルに顔を殴られたとか幸せとかけ離れた生き方の女性たち、私たちがいたから喜んだままアメリカに帰ったと言うのが響いた。幾つもの苦労の上に現代平和が存在してる、背けたのではない教わらない戦中戦後の歴史、なぜ日本の政治家はくだらない事ばかりしてる、こんな大事なものを残さないの?