内容説明
二度目の原発事故でどん底に落ちた社会―。三年前に懲役を終えたばかりの及川頼也は、若頭に「アル中を治せ」と命じられ、とある大学病院の精神科を訪れる。検査によると、及川の脳には「良心がない」のだという。医者らを拒絶する及川だが、ウィリアムズ症候群の少女が懐くようになり…。人間の脳は変われるのか。ハードボイルドの筆致で描く、脳科学サスペンス!
著者等紹介
荻原浩[オギワラヒロシ]
1956年埼玉県生まれ。’97年「オロロ畑でつかまえて」で小説すばる新人賞を受賞。2005年に『明日の記憶』で第18回山本周五郎賞、’14年に『二千七百の夏と冬』で第5回山田風太郎賞、’16年に『海の見える理髪店』で第155回直木賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
96
やくざの及川頼也は、粗暴で酒乱のため、組でも持て余され、若頭からアルコール依存症を治すために病院行きを命じられる。診断の結果、恐怖の概念が自他ともに薄く、良心がないことが分かる。彼と敵対する組長を殺し、身を隠すために治療を受け入れ、山の病院に入院する。小児病棟に入院する少女と知り合い、少しずつ変わっていく。喜劇的色彩を帯びつつ次第に、サスペンスへと変貌し、施設の医師と治療の謎、及川の同室の患者の秘密、及川の命を狙う刺客の存在等、ミステリーとしても楽しめる作品と同時に、脳科学サスペンスとしての楽しさもある。2023/11/08
ふう
91
ヤクザの暴力シーンは想像するのもつらい描写でしたが、その残酷さの倍くらい笑わせてもらいました。精神科病棟での非人道的な治療の描写もひどかったけど、そこにもユーモラスで温かい表現がたくさん。狂暴だった主人公が、最後に一番まっとうな人間に代わっていったのですが、きっかけが小さな女の子のくったくのない笑顔だったというところが荻原さんらしいですね。荻原さんの愛をたくさん感じさせてもらえる作品でした。2021/04/27
dr2006
58
脳は変われるんだよ。脳内再生されるハードボイルドに前頭葉が痺れた。脳の障害で恐怖と良心を喪失した及川類也は周りからはサイコパスと称賛され、ヤクザ組織の中では重宝されていた。そんな彼に下された病名は、反社会性パーソナリティー症候群及びアルコール依存症だ。ある時、組織の幹部を襲撃した男を返り討ちにしたが拗れ、組織間抗争に発展。及川はとある施設に入院し身を隠すことになるが、そこで行われる治療に疑問を持ち始める。人を合法的に拘束できるのは裁判官と精神科医だけだ。予定調和こそ望まないがもう少しその後が読みたかった。2023/03/22
佳蓮★道央民
57
★★★★★★★七つ星👏いやぁ、初読み作家さんでしたけど、彼氏さんと一緒に読んだけど、これ書くのって凄いと思うよ!!なんていうか、ヤクザがドタバタして、女の子を助ける話でした!!ただ、ヤクザが暴れて、ドッタンバッタンしてて、落ち込んでるときに読んだら、あぁ、こんな奴いるなら落ち込む必要ないな!って思う小説でした(*^^*)最後は、本当にハードボイルドな小説でしたね!!その前は、ヤクザの人生のお話というか。凄く読んでて、元気を貰える、笑いながら読んでた小説でした!618ページあったけど、まぁ長かったです笑2020/10/05
TAKA
50
ラストが曖昧でその後がものすごく気になるけれど罪を犯してもいるしねみたいな。反社会性パーソナリティー障害でアルコール依存症のヤクザさん、手短に言えば良心がないということです。知らない病名が次から次と出てくるんだけど、人間には様々な障害を抱えている人が多いことがわかる。2度目の原発事故が日本に発生し、しかもテロという設定。なんか現実味を感じすぎて怖い。後半ハートフルな感じで軽く読めたけどとにかく長かった。2024/09/26