内容説明
お不動さんの参道にあるうなぎ屋『まつむら』。そこにはとある一人の男に縁深い、五人の女たちが集う。売れない俳優と同棲する女、大学教授と見合いをする女、ベストセラーを夢見る女、「太るから」うなぎが嫌いな女―。人生の決断を迫られた彼女たちのそばにはいつもうなぎがあった。甘くてしょっぱい、うなぎのように濃厚な連作五編を収録!
著者等紹介
加藤元[カトウゲン]
1973年神奈川県生まれ。日本大学芸術学部中退後、さまざまな職業を経て、2009年『山姫抄』で小説現代長編新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
153
権藤佑市。同性から見てもダメ男だな。女にだらしなくて、言いたいこともちゃんと言えず、シャキッとすれよと怒りが沸々。と、思ってた。ところが、ラストに進むに連れて、佑市の見方が変わってしまった。人にはいろいろあるんだね。でも、言うべきことは言わないと、そこには誤解しか生まない。佑市に縁深い、五人の女性達が、うなぎ屋“まつむら”で人生の岐路という名のドラマに立つ。それは、うなぎの魅力、いや佑市のせいなのかはわからない。読んでいると、当然、うなぎが食べたくなる。でも、俺はうなぎより寿司だな(笑)。2024/05/08
fwhd8325
69
うなぎを目の前にすると、本当に幸せな気持ちになります。うなぎは落語のネタにも使われていますので、古くから愛されているごちそうだと思います。先日、博多でうなぎをいただく機会がありましたが、関東のうなぎとは違った調理方法で、これは新鮮で大変美味しくいただきました。人生も様々な方向性があるように、前を向いていきましょう。2021/04/13
そら
55
期待を裏切られた!久々に味わう展開に、もう一度最初から読み直す。うなぎ屋「まつむら」を訪ねる人々の連結短編集。典型的なダメ男の祐市と、リンクする女性たち。タイトルに「女子」とあるから若い女性たちを想像したが、一章二章に登場するのはちょっと人生に躓いた四十女たち。なーんだ、人生をやり直そうとするちょっといい話系なのか、と思いながら読み進めると、まさかの展開が。そして、うなぎは食べようと決意をし、大人の心の隙間を埋めるものとの台詞に胸が熱くなる。良い意味で期待を裏切る良書でした!私もご褒美飯をたべよう。2021/05/08
おいしゃん
42
そこまでうなぎが大好きなわけではないが、読み終わるとやはり「うなぎ屋のうなぎ」を食べに行きたくなった。 短編集だが、話を重ねるにつれ、主人公の色々な姿が明らかになり、男前に思えてくると同時に、近くにいる人の大事さを感じさせてくれる。 モデルになったのは目黒の「にしむら」のようだが、上うな重は3,900円。コロナが明けたら、自分へのご褒美のときにでも、ぜひ伺いたい。2021/05/26
煮豆
40
「うなぎ」にまつわる連作短編集。最後に伏線回収されるのが良かった!うなぎは「心をいっぱいにしてくれるごちそう」とはいい響き。人生のなかの節目に食べることが多いうなぎ。いろんな気持ちをもって食べるうなぎ女子たちに共感した。あとがきを読んで著者が女性であったことを知る。名前のイメージから男性かと思っていた。初読みなので他の作品もチェックしよう!!2021/06/09