内容説明
瀬戸内海に浮かぶ五木島。過疎が進み、航太の通う高校も再来年には廃校になる。家業の和菓子屋を継ぐことを父親に反対され、宙ぶらりんな日々を過ごしている航太を、俳句甲子園を目指す同級生の日向子が仲間に誘う。幼馴染の恵一や個性豊かな後輩たちをどうにか仲間に引き込んで、頭数は揃った。未来への希望も不安も、すべてを込めて、いざ言葉の戦場へ!
著者等紹介
森谷明子[モリヤアキコ]
1961年、神奈川県生まれ。2003年、紫式部を探偵役にした王朝ミステリ『千年の黙 異本源氏物語』で第13回鮎川哲也賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
昼寝ねこ
92
『春や春』の続編だがストーリーは別々なので独立して読んでも大丈夫。瀬戸内海の離島に暮らす高校生たちが俳句甲子園に挑む。地域や学校によって違いはあるだろうが部活で日常的に俳句を詠む高校生がこんなにいることに驚く。前作の主人公は東京の女子高生だった。同じ題材で詠んだ俳句でも作者の育った環境によって捉え方が違うのが面白い。俳句の試合は句の優劣だけではなく鑑賞ポイントが得点に入るのもこの2作品で知った。2024/03/08
タカギ
27
『春や春』と両A面的な話。藤ケ丘女子高校の面々もちょっと出る。舞台は瀬戸内海の島にある分校。島は過疎が進み、高校も廃校が決まっている。その高校でメンバー探しをイチから始めるところは、前作と同じ。強引な女子が先頭に立っているのも同じ。男子が主人公のほうが読みやすいかな、と思ったら、呑気者すぎてイラッとすることがあった。兄妹の話は良かった。表紙が好き。2021/01/08
NAOAMI
13
俳句甲子園作「春や春」の別出場校視点。瀬戸内に浮かぶ五木島分校が挑む。俳句そのものの得点にプラス、観賞ポイントをディベートする点が採点競技として面白い。俳句について素人の読者にも登場人物互いの評価を通じて句の世界や意図を感じることができる。競技の勝ち負けとは別に、離島の子供らが抱える将来への不安、進路に関する周囲との摩擦、そして狭苦しい距離感にいる家族との問題が横たわり、さらにその感情が句に投影される。航太は割と素直に内面を吐露するタイプだが、日向子や京は彼女らの句を通して拡声する。人物の個性が清々しい。2021/08/22
ヨータン
10
五木分校の高校生、本当に皆素直で、優しく素晴らしい。そして、彼らが作る俳句も島の良さや家族への愛が感じられていてすごくよかったです。俳句甲子園、青春ですね。私が高校生に戻れたら、挑戦してみたいです。2022/06/11
Y.yamabuki
10
俳句でこんなにドキドキするなんて!俳句甲子園を目指す島の高校生の青春ストーリー。五人のチームで、作品点、鑑賞点を競い合う。ディベイトに備えての事前練習、本番中のチームプレイ。運動部さながらの熱さが胸にジーンと来る。それと同時に描かれているのは、彼等が抱えている悩み、進路だったり、家族関係だったり。そこに人口減少が進む島特有の問題が絡む。高校生っていいなぁ、いつでも海を眺められる島の暮らしもいいなぁ(現実的には大変だけれど)と羨ましくなる作品。2020/08/27