内容説明
鮎川哲也が推理雑誌に発表した短編“死者を笞打て”に盗作の疑いがかかった!?十年ほど前に石本峯子なる作家が書いた“未完の手記”と内容が同じだと批評家から指摘を受けたのだ。早速、新聞社が取材に訪れ、出版社からは刊行中止の連絡があった。作家生命の危機にさらされた鮎川は、自ら真相究明に乗り出したが…。巨匠の異色作に加え、激レアな短編も併録!
著者等紹介
鮎川哲也[アユカワテツヤ]
1919年東京生まれ。南満洲鉄道勤務の父に伴い少年時代を大連で過ごす。’43年「婦人画報」の朗読文学募集に佐々木淳子の筆名で書いた掌編「ポロさん」が入選。’49年「宝石」百万円懸賞コンクールに本名(中川透)で応募した『ペトロフ事件』が一等入選。’56年には講談社の「書下し長篇探偵小説全集」の13巻募集に『黒いトランク』が入選。以後、本格物の長短編を数多く発表。’60年に、『憎悪の化石』と『黒い白鳥』で日本探偵作家クラブ賞(現・日本推理作家協会賞)を受賞。’90年から発足した東京創元社主催の鮎川哲也賞、’93年から始まった光文社文庫の『本格推理』にて多くの新人を発掘。2002年9月24日死去。ミステリー界に遺した功績をたたえ、翌年日本ミステリー文学大賞特別賞が贈られた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
67
鮎川哲也が発表した「死者を笞打て」、ところがそれに盗作疑惑がかけられる。冤罪を晴らすべく調べ始める鮎川哲也だが、向かう先で殺人が起き…。という内容からわかるように著者周辺、というより当時のミステリ文壇を舞台にしたミステリ。登場人物も淵屋隆夫とか星野新一、酒沢左保や大虻春彦とかどこかで聞いたような名前ばかり。この時期のミステリ文壇には暗いため、十分楽しめないのが残念かな。社会派と新本格の狭間に隠れているような気がするし。バカミス寄りでラストも唐突だけど、鮎川哲也の活躍?を楽しむファンブックとして読めました。2020/01/08
らび
32
タイトルとは違って若干コメディっぽさが意外と面白かったです。もっと重厚な雰囲気かと思ってましたが、たまに「これは意味が?」なところも時代を感じさせるものでした。それに今ではそう珍しくもない犯人の秘密・・はこの当時結構斬新だったのでは?著者ご本人が実名で登場。盗作疑惑を自ら晴らそうと奔走するのですが、・・他短編3編も侮れません。2020/05/27
かめりあうさぎ
32
鮎川先生自身が作品の主役として登場するという変化球のミステリ。盗作疑惑をかけりた鮎川先生が、汚名返上の為に真相解明に乗り出す。しかし、足掛かりになりそうな人がどんどん殺されてしまい…。結末が意外で面白かったです。1993年の作品に加筆しているが、当時の時代の空気感も伝わってくる。残念ながらその時代の作家に疎いので身内笑いはできなかったのが少し残念。巻末に初期の掌編と短編が3話収録されており、こちらは幻想ホラーの雰囲気。少し意外でしたが割りと好みでした。2020/03/19
西
26
特別収録の「月魄」「雪姫」を読んだことが無くて。表題作と地虫は再読。表題作は作者のいつもとは違う一面が出ていて、ファンとしては面白い。初読がこれだと次の作品に手が伸びないような気がするけど。地虫、読み終わった後の余韻が好きで、他の2作もそういう余韻があり、鮎川さんが推理小説ではなくこういう作品を書き続けたらどんな作品生まれてたのかなとも思う2020/06/06
Urmnaf
13
「鮎川哲也」の盗作疑惑を巡って起きる連続殺人。当時の作家たちがほぼ実名で登場するが、実録(風)小説というよりもユーモア小説。昭和も半ばでレトロ感も満載。自分はニヤニヤしながら楽しめたけど、今の人たちからすると、何が面白いの?ってなるかも。オマケの短編3作は、初期の習作。全く異なる作風で、意外な一面を知る。2019/11/08