内容説明
婚期を過ぎて母とつましく暮らす市子のもとに、二十五年前に音信を絶った徒兄の圭吉が訪ねて来た。市子に昔の記憶はないが、目の前の中年男は優しく魅力的だった。ほどなく二人は一つ屋根の下で暮らし、結ばれるが、日を追って男の正体が明らかに―。巧みなプロットで読む者を引き込む表題作など、女性ならではの繊細な心理描写が光るサスペンス推理八編を収録!
著者等紹介
新章文子[シンショウフミコ]
1922年京都生まれ。府立第一高女卒業後、’39年宝塚音楽舞踊学校に入学。同期に淡島千景、久慈あさみがいる。’43年に歌劇団を辞め、京都市役所に勤務。その頃から短歌や童話の執筆を始め、’48年童話集『こりすちゃんとあかいてぶくろ』を上梓。’59年には初めての長編ミステリー『危険な関係』で江戸川乱歩賞を受賞。2015年10月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
penguin-blue
38
何というかこてこてに「どろどろした」ミステリー短編集。登場人物も肉食男と厚化粧で金遣いの荒そうな女ばかり。ほっこりとか、微笑ましいとか、人間の悲哀とかいう要素がみじんもなく、色恋と金にまみれた話ばかりなのだが、ここまで揃うと逆に妙な爽快感のようなものを感じる。某週刊新〇の男と女の事件簿小説版、みたいな感じか。もっとも怖さでいうと最近報道される、恨みも何もない人への殺意みたいな方が動機を作りこんだ小説よりもある意味怖いのだけれど。 2021/12/02
のんちゃん
25
昭和中期に刊行された短編推理小説を作家別に集めた復刻版。新章さんの本作はミステリーという謎解きではなく、犯人の視点からの話の展開で、田村正和さんの古畑任三郎シリーズの様な印象だ。昭和中期の話だけあって、私の歳ならかろうじてわかる文言や時代風俗が描かれていて、若い人にはなかなか、色々と想像する事が難しい場面も多いと思う。この作者さん、宝塚にも在籍されていたとのこと、表紙裏のお写真でも美人さんなのがわかる。2020/08/14
coco夏ko10角
24
50年代・60年代、8つの作品収録の短編集。人間の感情のドロドロした部分がうまく書かれている。表題『名も知らぬ夫』主人公はどうするのかとドキドキしながら読み進める。『奥さまは今日も』と『年下の亭主』がよかった。2019/11/21
rosetta
21
★★★☆☆今年出た新刊ではあるが発表されたのは1959年から64年にかけての八篇と、もはや古典と言ってもいい時代。社会的バックグラウンドは違っても人間は変わらないんだなぁと。特に最後の『不安の森』なんて、親のない子を簡単に、それこそペットの様に貰ってくるのは今の時代ではありえないだろうが、育児に倦んで虐待してしまうなどは、まさに今の問題じゃん!って感じ。昔の人が人情厚かった訳でもない。この本だけを読むと、心を病んで自殺に見せかけて相手を殺そうとする話が多いな。2019/09/20
アヴォカド
20
松本清張もそうなんだけれど、昭和ミステリーって、アイテムが昭和なだけで、嫉妬とか欲とか猜疑とかの情念みたいなものは驚くほど古びてないんだよね。いつの世も人間の情念は変わらないってことだろうか。2019/05/30
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