内容説明
大学で法制史を教える山根辰雄は、古書店で集めた本に、同じ蔵書印があることに気付く。その持ち主は亡くなっていたが、両親と妻の幸子は健在で、問い合わせると家に招かれた。そこでは、若くて魅力的な幸子を中心に、青年客たちが客間に集っているのだった。ミステリアスな家族の周りで起こった事件を描いた表題作他一編を収録した傑作小説集。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年北九州市生まれ。給仕、印刷工などの職業を経て、朝日新聞西部本社に入社。懸賞小説に応募入選した「西郷札」が直木賞候補となり、’53年に「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。’58年に刊行された『点と線』は、推理小説界に「社会派」の新風を呼び、空前の松本清張ブームを招来した。ミステリーから、歴史時代小説、そして古代史、近現代史の論考など、その旺盛な執筆活動は多岐にわたり、生涯を第一線の作家として送った。’92年に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶんぶん
24
【図書館】本格小説を読みたくて「清張」を借りて来た。 「高台の家」こんな立派な家があるのだろうか、そこで繰り広げられる異常な宴。 結局、糖尿病の主人が一癖あったのですね。 「獄衣のない女囚」当時の生活が醸し出す雰囲気が、独特。 同性愛が絡むと感じさせ、全く違った方向性にミスリード、少し荒っぽいと感じた。 抜け穴が良く考えるとありそうな・・・さて、「ゼロの焦点」を読もうかな。2024/12/21
パチーノ
8
表題作『高台の家』と『獄衣のない女囚』の二篇を収録。それぞれ別々の週刊誌に連作の一篇として連載されたもの。閉ざされた環境で起こる事象、事故、事件。女性の鬱屈。氏の作品は随分読んだが完全読破までにはまだまだ道半ばだな。2019/04/30
eipero25
7
高台の家、獄衣のない女囚の2作品ともに2時間サスペンス。 動機が薄くて、トリックはむりくりだけど、環境やキャラクターはさすがにおもしろい。時代を感じさせる驚きがいっぱいで興味深い。資産家の邸宅とか、当時最先端の単身者用公営団地、今でいうワンルームマンションみたいなのね。 驚くのはこの時代、62歳の女性をよぼよぼの老婆呼ばわり、だったのね。 きっつぅ。2021/07/10
ねんまに
6
中編2本収録。1本目はちょっと谷崎潤一郎味のある、清張らしくない作品。2本目は高度経済成長期における文化背景を舞台にした清張らしいサスペンス。どちらも小粒だがまあまあよかった2023/09/29
ゆき
6
「高台の家」、「獄衣のない女囚」の両篇とも予想できなかった結末だった。表現など時代を感じるが、「獄衣のない女囚」は特に当時の社会的な雰囲気も感じとれる内容。女性向けアパートの監視的な空気が程よくいい舞台設定だと思った。2020/05/17