出版社内容情報
大正末期の激動の浅草で、男女のめくるめく駆け引き迸る歴史小説の傑作。著者は山風賞ノミネートなど、話題作連発の実力派。
内容説明
時は大正。消えた姉を追ってやってきた帝都屈指の歓楽街・浅草で、仙太郎は浅草六区を牛耳る男子禁制の少女ギャング団・紅紐団の長、操と出会う。家族より強い絆で結ばれ、厳しい団規に支配される紅紐団に仙太郎は女装して潜り姉を捜すが、その裏では彼の知らぬある企みが進行していた。最底辺の街を、時代を、生き抜け。少年少女らの生きる力が迸る、傑作長編!
著者等紹介
須賀しのぶ[スガシノブ]
上智大学文学部史学科卒業。1994年「惑星童話」でコバルト・ノベル大賞を受賞しデビュー。2010年『神の棘』が各種ミステリーランキングで上位にランクインし話題となる。’13年『芙蓉千里』でセンス・オブ・ジェンダー賞大賞を受賞。’16年『革命前夜』で第18回大藪春彦賞を受賞、第37回吉川英治文学新人賞候補に。’17年『また、桜の国で』で第156回直木賞候補、第4回高校生直木賞受賞。同年『夏の祈りは』が「本の雑誌が選ぶ2017年度文庫ベストテン」第1位になる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolgang1957
56
名前も作品も全っ然知らない聞いたこともない作家さんでした。なので、この物語にはベースがあるのか、全くのフィクションなのかもわからないまま読み始めたので、マユツバものでページを捲りました。いや、なかかなというかこれは面白かった😆男装の麗人と歌舞伎の女形も逃げ出しそうな男子の組み合わせが、ちょっとややこしいながらも引き付けられました。不良少女団って大正の時代にベースがあったようで、与謝野晶子や平塚らいてうやモボモガやカフェの女給さんってイメージしかなかったけど、面白そうな時代です。期待してなかったけど満足。2021/12/01
つばめ
47
紅色の紐は家族の証?浅草を仕切るギャング団『紅紐団』と主人公仙太郎の、仙太郎の姉を巡る物語。須賀さんはこういう少年少女の一時しかない命の輝きや脆さ鮮烈さを描くのが本当に上手い。祝言前に姿を消した姉・ハルを探して浅草まで来た仙太郎と邂逅した紅紐団。行き場のない少女たちのやるせなさや、また居場所を無くしたらという絶望感。それを変えていきたい仙太郎の真っ直ぐさ。王道で生きるのは厳しい。でも王道で行く事ができるなら突き進んで欲しい。「良い女の子は天国へ行ける。悪い女の子はどこにでも行ける」解説も沁みる。2024/10/29
えみ
47
少年少女達は生きる術を、場所を探して絆という諸刃の剣に縋りつく。裏切りの愛憎劇。誰かを利用して生き抜いてきた過去があるのに、何故自分だけは利用されないと信じることが出来るのだろうか。どんなに粋がっても何処かに残っている穢れなき心がそうさせるのか。浅草六区を牛耳る大人顔負けの組織、男子禁制のギャング団「紅紐団」に姉を捜すため女装して潜入する仙太郎。彼の巻き込まれた世界は、悲哀に偽りの仮面を被せた道化師達の舞台に過ぎなかったのか。女性が社会進出を始めた大正時代が生んだ光と影が人の強さ、脆さを浮かび上がらせた。2020/10/28
ユメ
44
時は大正、甘美な地獄である浅草六区で暗躍する少女ギャング団「紅紐団」の物語。少女たちが生きるためにとる手段は酷なものだけれど、居場所を得て自立する姿は凛として見えた。しかし、読み進めるうちにそんな虚像は音を立てて崩れてゆく。そこにあるのは義賊なんかじゃなく、かつて社会の底辺で搾取されていたはずの女が、同じような境遇の少女を喰い物にしている構図。鮮やかな紅が急速に褪せていく衝撃の中、少女たちの生きる意志だけが本物だった。凄惨な現実においてそれだけが燦然と輝いていて、だからこそこの物語は私の心を激しく抉る。2019/06/19
hrmt
29
欲望渦巻く一大歓楽街浅草の少女ギャング団。今でいう不良少女として、大正の頃、莫連女なるものが実際存在していたのだと初めて知った。女性の地位も低い時代、家族も頼れず底辺に生きながら仲間とのかりそめの絆を信じ、違法に手を染めながらも友情と誇りに縋った少女たち。凌雲閣の12階から見下ろす浅草は、下層を闊歩する少女たちに何を教えただろう。綺麗事で包まれた夢は、腹を満たしてくれない。裏切りを重ねても、自分の思うように強く生きようとしたハルが、何故だかとても清々しかった。2019/05/13