出版社内容情報
古谷田奈月[コヤタ ナツキ]
著・文・その他
内容説明
男女同権が実現し、同性愛者が新たなマジョリティとなった世界。異性愛者の男子大学生、タキナミ・ボナは、オリオノ・エンダと共に精子バンクを占拠した。駆け付けたビイは、ボナの演説に衝撃を受ける。「マイノリティという存在を概念ごと捨て去ることに成功したこの素晴らしい社会が、ぼくの人権を侵したのだということです」。現代の人間の在り方を問う衝撃作。
著者等紹介
古谷田奈月[コヤタナツキ]
千葉県生まれ。2013年「今年の贈り物」で第25回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。同作を『星の民のクリスマス』と改題し、デビュー。『リリース』は第30回三島由紀夫賞候補、第34回織田作之助賞受賞。「無限の玄」で第31回三島由紀夫賞受賞。「風下の朱」が第159回芥川賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
96
難しかった! 古谷田さんの本はこれで2冊目である。だが、前の本とは全くコンセプトが違う。ここは同性愛者がマジョリティであり、異性愛者はマイノリティになった世界での話である。ここではいまの世界で当たり前のことが当たり前ではなくなっている。またその逆もしかりである。ここの主人公に感情移入しにくい場面も多々ある。だが、マイノリティとかなにか。またマジョリティとはなにかを考えさせられるものであった。2019/08/06
Haru
22
性差別のない世界は、逆に性の特性を際立たせ、男らしさ女らしさを否定する世界となり、「平等」の概念は捉え方を誤れば「差別」となる。みんなが等しく生きられる、等しく生きやすい、等しく幸せに生きていける思想も政策も幻だ。マイノリティがマジョリティになれば、マジョリティがマイノリティになるだけ。「自分らしく」生きることが、楽な人もいれば、「自分らしさ」に苦しみながら生きる人もいる。それはどんな世の中になっても変わらないのだろうな。テーマは面白いけれど、芯が感じられず散漫な印象で残念。2020/05/05
ピョロ太郎
14
めちゃ面白くて一気読み。「オーセル」という架空の国(登場人物の名前は日本人ぽい)が舞台。そこは同性愛者や無性愛者がマジョリティになり異性愛者はセクシスト扱いされるようになった世界。マイノリティになってしまった異性愛者の生きづらさ、とか今の世界からは到底考えられないものをよくここまで書いたなぁと思う。ややこしい話だけど、女らしさや男らしさを押し付けることはよくない、でもだからと言ってそういうものが好きという人を非難するのは違う、みたいなことだろうか。ところで私はこの国にちょっと住んでみたいです。2018/11/01
秀玉
10
忙しい年末だった。出張と報告書作りに追われた2023年の年末だった。そんな中三冊ほど読んだが、内2冊はどうにもだめ。その一冊がこれ。読んでいて、主人公らしき人はは女性なの、男性なの、相手は男性、それとも女性。言葉使いからは男女はわからず、行動からでも同様。性転換手術はあたりまえ、妊娠は精子から。優秀な男性から精子バンクへ。この小説は男女をわけて読んではいけないのね。どうにもよみづらかった。1話目で断念。最後にまた表題の続きがあるらしいが(読んでいないのでわからない)、パラパラめくっても興味はひかなかった。2023/12/29
あかまい
9
自分の頭の中に新しい引き出しができた気分。色々考える事もあり、話を急いで読みたいと思ったり、立ち止まってぐるぐる考えたり。噛み応え充分のお話でした。最後、3人の思考が溶け出して一つになるような感覚も好きでした。2019/02/25