出版社内容情報
結城昌治[ユウキ ショウジ]
著・文・その他
内容説明
東京の千川上水沿いで連続する“通り魔”事件。いずれも若く太った女性が臀部を切りつけられ、被害者は数を増すばかり。だが、警察の捜査は捗らず、ついには婦警を囮に犯人を誘き寄せたが…。法の抜け穴をついた巧みな構成が光る表題作を始め、著者の記念すべきデビュー作「寒中水泳」、国際情勢を加味したスパイ小説「風の報酬」など、名手の腕が冴える傑作集!
著者等紹介
結城昌治[ユウキショウジ]
1927年東京生まれ。早稲田専門学校卒。東京地方検察庁に在職中の’59年に「寒中水泳」で、第1回「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」短編コンテストに1席入選。’60年に同庁を退職し、作家専業になる。’62年に発表された『ゴメスの名はゴメス』、’63年の日本推理作家協会賞作品『夜の終る時』、’65年刊の『暗い落日』などで推理作家としての地歩を固めた。『軍旗はためく下に』で、’70年に直木賞を受賞。’85年には、『終着駅』で、吉川英治文学賞を受賞した。’96年1月に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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geshi
25
『寒中水泳』手掛かりの出し方は良いのに登場人物多くてまとまり悪い。『天上縊死』日本縊首愛好家協会の設定が面白いが結末は安易。『死ぬほど愛して』構成がシンプルならラストの行き違いが際立ったのに。『通り魔』読者の先入観を裏切った法の穴を突く反転。『喘息療法』愛憎半ばする夫婦のユーモラとサスペンスの両立する関係がオチを活かす。『不可抗力』犯罪計画への思わぬ自分からのしっぺ返しのおかしみ。『六年目の真実』疑惑の募らせ方がいいミスリード。『風の報酬』ベトナム戦争を背景にしたスパイ物を短編でやるには重すぎたか。2018/10/01
ちょん
17
このタイトルと表紙(^q^)ぶたさーん❗(笑)中身は昭和のミステリー、まだ犯罪にトリックがあるような感じで、現在では出来ないミステリーだなぁと思いながら読み進めましたq(^-^q)携帯電話がミステリーに色んな制限をかけたなぁと染々感じます。2018/09/21
有理数
14
結城昌治は初めて読みました。まさしく昭和のミステリという感じで、殆どの収録作が夫婦の縺れや不倫・浮気を描いています。それも含め、やや好みから外れる短編もあるは事実です。しかし、短編としての着地はどれも皮肉と驚きに満ちています。ベストは「通り魔」「六年目の真実」。前者は、法廷と警察の"穴"をくぐって二転三転する構成が最高。後者はあまりにも切れ味のよい真実に椅子から転げ落ちました。不倫・浮気が多い、とは書いたものの、単純な夫婦の縺れではないユニークな展開のものも多いです。面白かった。2018/11/14
harukawani
7
ちくま文庫『あるフィルムの背景』に続いて光文社からも結城昌治の傑作集が!法の穴を突く表題作、悲愴なラストが居た堪れない「死ぬほど愛して」、スパイ物の「風の報酬」、奇想天外な設定から皮肉な結末へ繋がる「天上縊死」、妻への疑念が消えない男の悲劇を書いた「六年目の真実」などなどバラエティに富んでいて楽しい。個人的ベストはサスペンスとユーモアの配合が見事で、オチに唸る「喘息療法」、次点は大胆な犯罪計画を立てた男の哀しいラストに笑う「不可抗力」、3番手がラストの斬れ味とタイトルが秀逸なデビュー作「寒中水泳」。2018/09/24
はんげつ
6
まず印象に残ったのは、首吊りが地下の競技として描かれる「天上縊死」ですね。設定の奇天烈さに対して妙に感傷的な話運び、アレは一体なんなんですか。あとは、「喘息療法」「不可抗力」「六年目の真実」の三連キレキレオチボーナスタイムが良いです。結城昌治という作家を構成する要素で一番好きな部分が詰まっている三作です。傑作集かどうかは賛否分かれそうだけど、全方向にレベル3の変化球を持つ技工派ピッチャーみたいな一冊だと私は思います。2019/12/09