出版社内容情報
高橋和島[タカハシ ワトウ]
著・文・その他
内容説明
風雲急を告げる戦国の世、山深い美濃に生まれた左介(織部)は、幼少より織田信長に仕え、若き秀吉に引き立てられて出世の道を歩んだ。千利休や陶工達との邂逅が彼を茶の道へ誘い、ついには徳川家の指南役に上りつめるが―。武将ながらも茶湯や焼物にその名を残す希代の風流人の一生を描いた表題長編に加え、著者のデビュー作(オール讀物新人賞受賞作)を併録。
著者等紹介
高橋和島[タカハシワトウ]
1937年樺太(サハリン)生まれ。7歳から3年間を台湾で過ごす。中央大学法学部卒業。’89年に「十三姫子が菅を刈る」で第69回オール讀物新人賞、同年「火燕飛んだ」で第12回小説CLUB新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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河内 タッキー
9
古田織部を主人公にした小説というのは珍しい。サブタイトルにもあるように織部の生涯に焦点を当てているため、あっさりとした内容。織部の周辺の人物や事件の方が前面にあり織部自身は淡白だ。大坂の陣の裏で起こった事件、並行して読んでいる「城塞」には出てこないと思うが、これを想像しながら読むと、より厚みが増して面白いのではないだろうか。2018/02/25
左丘明
1
戦国の茶人にして武将でもあった古田織部正重然は謎に満ちた人物だ。茶道の歴史では千利休と小堀遠州をつなぐ存在であり、茶の世界に大きな足跡を残している。また織部焼や織部灯篭などの美術品にも名が残る。本書は珍しくその織部を主人公にした小説。少年時代から信長の近習として仕えるあたりの描写が秀逸。間近から織部が見た信長像が魅力的。後年の織部の美意識は信長に淵源を持つのではないか。戦国時代を生き抜いたかに見えた織部は、大坂の陣で豊臣内通の疑念を持たれる。申し開きを拒否し切腹する姿には織部流の美意識が込められていた。 2018/06/06