出版社内容情報
天然の旅情の指し示すまま、憧憬と彷徨の生涯を貫いた“浪漫的放浪者”檀一雄の特質を伝える短篇集
内容説明
青い海に面し、間断なく波の音が運ばれてくる架空の町。そこの大学予備校に通う榊山は新学期の教室で奔放な情熱家の鵜飼、静脈の浮かぶ巨きな頭の吉良と知り合う。十代の男女の愛と友情が交錯し、燃焼する青春の饗宴「花筐」。戦後の混乱期に破滅へと傾く誇り高い男を描く「元帥」、『火宅の人』へと連なる「誕生」など“浪漫的放浪者”檀一雄の特質を伝える短編集。
著者等紹介
檀一雄[ダンカズオ]
1912年山梨県生まれ。文部技官の父親の転任とともに東京、福岡、久留米、足利を転々とする。’36年、小説「花筐」を発表、翌年最初の作品集『花筐』を刊行。戦中は中国大陸で報道班員などを務める。戦後は妻・律子との生活を描いた『リツ子・その愛』『リツ子・その死』、第24回直木賞を2作受賞した『長恨歌』『真説石川五右衛門』や『夕日と拳銃』などで人気作家に。『火宅の人』を口述筆記で完成させた後、’76年、63歳で死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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中玉ケビン砂糖
62
戦前~戦後にかけて書かれた「いわゆる『高等遊民』めいた若者たちが刻々と迫る死の足音を聴きながら、最後の日々となるだろう生の横溢した『束の間の青春』を徒花として満喫する」系譜の作品群には、どうしても「これは軟派だろうか否か」とハンコで押したような感覚・猜疑・偏見のようなイメージを抱いてしまいがちだった(堀辰雄の一部作品群が「サナトリウム文学」と称されるのが代表例・あるいはマチネ・ポエティーク周辺の初期諸作)。2023/07/01
kaoriction@本読み&感想 復活の途上
24
海の波音と凪。若き血潮と相反する 漂う死とエロス。架空の町、十代の男女の友情、偏愛。偏り歪んだ青春。久しぶりにこの時代の純文学を読んだ気がした。三島由紀夫が愛読し、小説家を志すきっかけにもなったといわれる作品。確かに三島の好きそうな世界観、否、そのまま三島の世界観だ。檀一雄がこのような作品を書いていたことに少なからずの衝撃はあった。クラクラする。思ったより短い作品ではあったが、読み終えて、しばらくしてからまた手にしたい衝動。生きる血の、若さ故の危うさの、滴る血。若さ故のその脆さ。表題作含む初期の短編七篇。2018/10/04
ぼぶたろう
11
映像化に伴い、本屋さんで特集されていたので手に取りました。文章に凄みがあり、美しい文体だなと感じました。『ペンギン記』が1番良かったかなぁと思います。情景が手に取るように浮かぶので、『光の道』は大和の国が情緒たっぷりに脳内に広がり楽しめました。三島先生が好んだというのも納得。すごく好きそう(笑)2018/01/23
nyanlay
5
檀ふみさんのお父上、と言う事は存じていましたが未読でした。図書館で偶然見つけたので読んでみました。それぞれ作品ごとに雰囲気が違って、それぞれ合う合わないがありましたが、個人的には『ペンギン記』が好みですかね。2018/06/14
miaou_u
5
『花筐』を読みたくて手に取った。冒頭のくだりから既に、三島が好きならこれはたまらない、と思ったら、後書きで大林宣彦監督が、三島が愛読した、と書かれていた。若者たちの血潮と瑞々しさが漲り、時代の精神性と少年から青年へと変化していく荒々しさとが見事に調和し、例えようのない匂い立つ孤独な美しさを醸し出している。他収録の作品と比べても『花筐』は一度読んだら麻薬のように、何度も頁を捲りたくなる中毒性のある短編作品だ。2018/04/30
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