出版社内容情報
表題作と共に第1回直木賞を受賞した「風流深川唄」他収録。
内容説明
鶴賀鶴八と鶴次郎は女の三味線弾きに男の太夫と珍しい組み合わせの新内語り。若手ながらイキの合った芸で名人と言われる。内心では愛し合う二人だが、一徹な性格故に喧嘩が多く、晴れて結ばれる直前に別れてしまう。裕福な会席料理屋に嫁いだ鶴八と、人気を失い転落する鶴次郎。三年後再会した二人の行く末を描く表題作に、『風流深川唄』など三編収録の傑作集。
著者等紹介
川口松太郎[カワグチマツタロウ]
1899年(明治32年)東京・浅草生まれ。若くして久保田万太郎に師事、のち講談師悟道軒円玉に江戸文芸・漢詩を学ぶ。大阪で直木三十五らと雑誌を編集。1934年(昭和9年)に「鶴八鶴次郎」を発表、菊池寛に激賞される。翌年「風流深川唄」を発表、第1回直木賞を受賞する。その後、「愛染かつら」で人気作家になる。新派の主事を務め脚本多数執筆。戦後は大映映画の重役をつとめる。菊池寛賞、吉川英治文学賞など受賞歴多数。’66年芸術院会員となり、’73年文化功労者となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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michel
18
★4.2。軽妙な語り口でトントンと展開していき、知らない間にほろりと幕を下ろす人情物語。師匠の娘、鶴八。師匠の弟子、鶴次郎。どちらがかけても芸はならず。芸に生きる2人の引き合う親愛がしんみりと心に沁みた。こんな恋、いいなぁ。2020/01/11
くろすけ
18
芸と恋に注ぐ情熱。男も女も熱い!そうだよね、芸も恋も理屈でするもんじゃない。どうしようもなく突き動かされるものだよね。その果てに身を滅ぼしたって本望ってもんだ。明治に生きるそんな江戸っ子たちの潔くもどこか哀しい人情物語三篇。お正月に日本酒ちびちびやりながら読むのに最高でした☆2019/02/03
きのこ
15
直木賞75/187 栄えある第一回直木賞受賞作。とんでもなく秀逸!男女の機微をここまで描くか。切なすぎる。久々の蔵書行きです。2018/08/16
たらちゃん
7
むせるように迫る人情。熱い。三編、どれも熱くなった。鶴八鶴次郎はなりきって読んで切なく。最後が嬉しいのは風流深川唄。2025/06/29
NICK6
7
鶴八鶴次郎 .. 女と男、ともに、芸に生きる。一緒の時間と一緒の空間。そこに一生の人生。入り込んで絡み合う情けとプライド。交わっている感情が交わっちゃあ駄目な理由。一緒になれない理由。男の賢さは女の情愛を受け取らず、不本意な嘘と意志で崩していくのだよ。シンプルなストーリーながら、会話と文章には艶と粋が流れている。ホント素晴らしい。 2022/09/04