出版社内容情報
東野圭吾[ヒガシノ ケイゴ]
内容説明
中原道正・小夜子夫妻は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が出た後、離婚した。数年後、今度は小夜子が刺殺されるが、すぐに犯人・町村が出頭する。中原は、死刑を望む小夜子の両親の相談に乗るうち、彼女が犯罪被害者遺族の立場から死刑廃止反対を訴えていたと知る。一方、町村の娘婿である仁科史也は、離婚して町村たちと縁を切るよう母親から迫られていた―。
著者等紹介
東野圭吾[ヒガシノケイゴ]
1958年大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒。エンジニアとして勤務しながら、’85年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞受賞。’99年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞受賞。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、’12年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で第7回中央公論文芸賞、’13年『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、’14年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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読書素人本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
569
結婚とは、夫婦とは、家族とは、知らない者同士が縁あって一緒になることだ。一緒に暮すうちにお互いの人生で培われた性格や癖、足跡などを知り、生活を作っていく。しかし何十年過ごしても知らない一面があったことを気付かされるのもまた事実。本書にはそんな家族という最小単位の共同体に隠された謎が描かれている。深く深く考えさせられる作品だった。決して全てにおいて正しい考えなどないことを思い知らされた。人は過ちを犯してもやり直して生きていられる、そんな世の中が来ることを望むのは夢物語なのか。そんな思いが押し寄せてきた。2018/02/03
カメ吉
401
重い内容でしたが良い作品だったと思います。人を殺めた人間は死を以て償う。つまり死刑。動機、状況等に拘わらず死を以て償うべしって云うのは正しいのか? 賛同出来るが色々と別の考えもあると…。この作品は私には問題作でした。2017/05/21
ノンケ女医長
314
タイトルは、更生保護委員会へ宛てた手紙にある。「殺人者を、そんな虚ろな十字架に縛り付けることに、どんな意味があるというのか」と。殺人という大罪を犯した受刑者。再犯率が高く、懲役の効果は薄いという意見は多いのかもしれない。仮釈放の判断をした更生保護委員会に対し「目は節穴」と痛烈な批判もある。人を殺した人間は、また人を殺すおそれがある、と。この言葉をどう受け止めるか。差別なのか、それとも大切な人を守る最大の防衛手段なのか。たくさんのことを考えさせてくれる、社会的意義の大きな名作。2023/02/12
Atsushi
272
ミステリー好きの家内に薦められた作品。この著者の作品には「ハズレ」がないことを改めて実感。帯に「死刑は無力だ」とあるが、何の罪もない家族の命を奪われたら、自分は、やはり犯人に対して「極刑」を望むだろう。しかし、史也のような贖罪の方法もあるかもしれない。中原は、これから「殺人」と「償い」についてどのように向き合っていくのか。ちょっと重い気分になるが、「深い」一冊だった。2017/06/04
ぷう蔵
268
久々の東野氏作品。いくつかの事件が絡み合っていく様は相変わらず、ぐんぐん引き込まれた。が、この作品はずっと心の重さを引きずったまま展開し、読み終えた後もスッキリという感情は少しも出て来ない。誰が正しく、誰が間違っているのか?誰が幸せで誰が不幸か?結局、当事者でなければ分からないと言う事に辿り着くが、当事者といっても、立場の違う側では、正しいか間違っているかも全く変わってくる。いや、同じ立場でも個人の考え方次第で感じ方は変わってしまうのだ。死んで償う…、楽になるための言葉にも聞こえてくる。難しい問題だ。2017/05/17