出版社内容情報
彩瀬まる[アヤセ マル]
内容説明
ありふれた雑居ビルで繰り広げられるいくつもの人間模様。シングルマザーのマッサージ師が踏み出す一歩、喘息持ちのカフェバー店長の恋、理想の男から逃れられないOLの決意…。思うようにいかないことばかりだけれど、かすかな光を求めてまた立ち上がる。もがき、傷つき、それでも前を向く人々の切実な思いが胸を震わせる、明日に向かうための五編の短編集。
著者等紹介
彩瀬まる[アヤセマル]
1986年千葉県千葉市生まれ。上智大学文学部卒業。2010年「花に眩む」で第9回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
313
5編からなる連作短編。どの短編も、家庭の事情、恋など、これから前へ進もうとする一歩手前で終わるんですが、そこまでの過程がすごく良かったです。自分も何かに挑もうとする時は、どうなるかわかりませんが足掻いて、もがいて、前に進んで行こうという勇気をくれました。作中にででくる賛否両論の映画『深海魚』が気になりますね。2019/10/19
さてさて
234
私たちが暮らす街にはさまざまな建物が立ち並び、その中にはたくさんの人々が働いています。そして、そこに働く見ず知らずの人々にもそれぞれの人生があり、それぞれの暮らしがあるのです。この作品ではそんな市井の人々の生き様が五つの短編にわたって描かれていました。ひとつのビルに関係する人々が見事に繋がっていく様を見るこの作品。そんな見ず知らずの人々にもそれぞれの悩み苦しみがあることに気づくこの作品。切なさと優しさがそれぞれに感じられる物語の中に、人の生の営みの愛おしさに胸を熱くさせられた素晴らしい作品だと思いました。2023/10/08
しんたろー
211
錦糸町の雑居ビルを舞台にした5つの物語。世代も性別も違う5人を主人公に、脇役の人々も見事に書き分けて「ままならない現実に足掻く姿」を描いている。情景描写や台詞がスッと頭に入ってくる文章は私と相性が良いのか、全くストレスを感じないのが嬉しい。登場人物の誰もが嘘臭くないので、素直に共感しながら、行く末が気になって読み進めた。スッキリとした結末ではないが、微かな希望を抱かせて終わっているのもニクイ!各話の繋がりも無理がなく、彩瀬さんが本作を書いたのは20代だった筈で「才能がある人なんだな」と羨ましくも感心した。2019/02/14
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
175
彩瀬まるさん初読み。錦糸町の雑居ビルと「深海魚」という架空の映画を共通項にした5つの人生の物語。連作短編、というのとも少し違う、こういう短編集は初めてかも。それぞれの傷が、いたくていたくて少し目を背けたくなるような。そっと寄り添いたくなるような。みんな柔らかくて傷つきやすい部分はそっと胸の内に秘めてる。傷つけられたくない。でも分かってほしい。「七番目の神様」の店長と畑のおじさんと、ズカズカ入ってくる常連の藤原さん。なんか好きだなあ。あと「光る背中」のぎゅっと迫る弱さも好き。幸せになってほしい、みんな。2019/03/09
エドワード
144
仕事なんて、うまくいく日もあれば、弱り目にたたり目のような日もあるものさ。まじめな人ほど悩みも真剣。マッサージ師。イタリアンカフェの店長。古書店でバイト中のミュージシャン。IT企業の平凡なOL。元カフェ経営者。仲間割れしたり、恋人と別れたり、それでも明日も仕事。三冊めの綾瀬まるさん。都会の細かい仕事の狭間の感情の浮き沈みの描写が抜群に上手いね。落ち込んだ次の瞬間に訪れる<神様のケーキ>。なんとステキな形容。すれ違う五人の主人公はウツミマコトの映画と錦糸町のビルで密かにつながる。柚木麻子さんの解説もステキ。2017/07/15




