出版社内容情報
連城三紀彦[レンジョウ ミキヒコ]
内容説明
平凡なサラリーマンであった西村靖彦が突然消息を絶った。弟の直行は、真相を探るうちに兄が殺されたという疑念をもつ。義姉の純子を疑いながらも翻弄されるなか、高知の放火殺人事件の知らせが入る。高知と東京を結ぶ事件の迷路を彷徨いながら辿りついた衝撃の真相とは―。これぞ、まさに連城マジックの極み!耽美ミステリーの名手が遺した渾身の傑作。
著者等紹介
連城三紀彦[レンジョウミキヒコ]
1948年愛知県生まれ。早稲田大学卒。’78年、「変調二人羽織」で第3回幻影城新人賞を受賞。’81年、「戻り川心中」で第34回日本推理作家協会賞短編部門受賞。’84年、『宵待草夜情』で第5回吉川英治文学新人賞受賞。同年、『恋文』で第91回直木賞を受賞。’96年、『隠れ菊』で第9回柴田錬三郎賞受賞。2013年10月19日、逝去。’14年、第18回日本ミステリー文学大賞特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
150
連城三紀彦の最後から三番目の文庫化なのでしょうね。あと「女王」と「わずか一しずくの血」が残っています。これも解説は香山二三郎さんのものです。この小説は非常に読みごたえがありました。最後にかなりの心血というか力を入れた作品だということがよくわかります。最近の推理小説は現実に近くなっているものが多いのですがこのような作品もあってもいいと思います。途中で中断するとわかりにくくなると思います。2016/11/02
HANA
58
普段通り家を出た夫の突然の失踪。高知で起きた殺人事件。謎めいた六時七十一分という時刻…。現代が舞台の長編なので「花葬」シリーズや『宵待草夜情』のような詩情とロマンは望むべくもないが、事件を追う男女の関係性の変化や耽美な文体から紛れもなく著者の作風が感じられ読んでいて非常に嬉しい。真相こそ唐突なものの、そこに至るまである人物に関する嫌疑を掻き立てる書き方やその疑惑に翻弄される登場人物の心情等、これはやはり過程を楽しむミステリだなと読み終えて思った。あと事件の内容が途中で二転三転するのも著者らしいなあ。2019/10/15
geshi
33
読んでいる間ずっと心が落ち着かず、どこに向かおうとしているのか分からない問題作。名前のついた登場人物はおしなべて疑わしく見え、主人公であるはずの直行と純子は猶更信頼できない語り手。互いに思いがあるのに近づいたか次の瞬間には疑惑により遠ざかり、分かりやすい形に落とし込まない。事態が進展しても新たな情報が混迷を深め、「五時七十一分」の解き明かしや叙述トリック的な仕掛けもあるがミステリらしい割り切りは最後の最後までせず、ラストも朝のようにたゆたう。読者を引き回すにしても長さを含めて過剰に感じた。2017/08/26
RINKO
28
何が真実なんだ!と耐えきれず二晩睡眠不足になりながら読破。昼間は真面目に仕事しながらも、気になる、眠い、気になる、眠いの繰り返し。二転三転どころじゃない推理に頭を整理するのが大変でしたが、それも面白い作業でした。ただ、それだけ気持ちよく振り回されて、皆が疑わしく思える状態にされた結果、…あの結末は…。ちょっと唐突な感じがして、肩すかし。でも推理の道筋が面白くて、読んで良かったです。そして寂しい限りです。2016/10/20
まめこ
13
★★★☆☆毎度ながら第三者による想像と現実が混濁する真相、いつもなら連城マジックの深い余韻が待ってるのになぁ…直行さん、推理間違ってたりしない(笑)?疑心暗鬼、夢現な言動、紛らわしい嘘が話をややこしくする。そして事件の要となる刺青の女の存在は…?自分の読み込み不足は棚に上げ、きっと深読み用の真相がどこかに仕掛けられているに違いない!と思いたい(笑)。厄介な作品を遺されましたね…2018/08/12
-
- 和書
- 北国 - 詩集