内容説明
妻に先立たれ、毎日を無気力に過ごす礼二郎。彼を変えたのは、絵画同好会での幸子との出会いだった。やがて二人は恋に落ち、喜びも悲しみも分かち合いながら愛を育む。たとえ周囲の人間に後ろ指をさされようとも。だが、礼二郎は不意の病に蝕まれて…。ときめきを忘れかけていた男女が、限られた時の中で紡ぐ切実な恋愛模様を、まばゆいほどに美しく描く感動作。
著者等紹介
盛田隆二[モリタリュウジ]
1954年東京生まれ。’90年のデビュー作『ストリート・チルドレン』で野間文芸新人賞の候補に、’92年『サウダージ』が三島由紀夫賞の候補になる。「ぴあ」の編集者を経て、’96年より作家専業。2004年に刊行された『夜の果てまで』が30万部を超すべストセラーに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミカママ
68
ものすごく期待して手に取った本。自分自身は、主人公ふたりの年齢までにはまだ間があるけれども、礼二郎の「身も心も」壊れていく様が痛々しいほどリアルで身につまされた。人間、こうなっても(いや、こうなったからこそか)、恋愛できるんだなぁ。幸子さんがデキすぎ。盛田さんの、男性としての願望を集約したかの女性像ですね。ラストがちょっと、読者に丸投げ感あったかな。毛色の変わった恋愛小説、堪能しました。2014/12/13
ワニニ
49
いやー、非常に身につまされるというか、自分のこれからのこと、つまり老いと死について、しみじみ考えてしまった。嫌悪感と感動がいっしょくたになって、不思議な気分の読後。礼二郎は、一般的に見ればかなり幸せな老後だと思う。でも、自分の老いていく気持ち、惚けていく頭を冷静に感じて混乱していく様は、本当に切ない。あの年齢になってからのお付き合い、特に恋愛も、また難しい。人間らしく、自分らしく…と、家族や老化との兼ね合い、やりきれない思い。私自身だってどうなっていくか不安。幸子さんの過去は、ちょっと盛り過ぎ?2014/12/07
takaichiro
42
両親がそろそろ75歳を越える頃になり、自分もそろそろ50が近づく中、老いを感じるプロセスと人生を最後まで燃焼させることをイメージする時間がある。身も心も不自由になることへの不安を抱きながら、人生の最後まで全力を尽くす衝動をどの様に昇華していくのだろうか。本書は老いらくの恋がテーマになっている点で評価がわかれるが、個人的には心揺さぶられる作品でした^_^2019/05/16
じいじ
34
久々の盛田隆二小説、内容的には陰惨な印象もあるが、堪能できた。75歳老人と64歳女性の淡く切なく、熱い老いらくの恋。73歳の小生、いやが上にも主人公に重なり身を置き換えて読んだ。「先立たれて初めて気づく女房の存在の大きさ」は小説の定番だが、本作では妻を失った男のひ弱さ、だらし無さが情け容赦なく描かれているのに唖然とした。しかし、教訓も得た。年老いても真剣に生きることの尊さ、女性の裡に秘めた優しさの魅力と精神力の強さを再認識させられた。そして、「恋」には年齢の境界線がないことも・・・。2014/12/17
ピロ
26
妻に先立たれた主人公のその後の恋愛模様。てっきりね、僕と同世代、40代半ばの主人公の物語かと。ドキドキしちゃうかなーと。そしたらね、75歳と64歳の物語で。僕が75歳になった時、こんな色っぽいことにはならないだろうなーと思いながら読み進めて。解説の中江有里さんの、『身も心も不自由になってから、生き方が決まる』。なるほど。そろそろ自身の終活についても考えないといけないかな。。。2016♯112016/04/08