内容説明
大屋圭造は三流経済誌の記者。企業の提灯記事を書いては広告料を取る「トリ屋」である。大屋は亜細亜製糖社長・古川恭太に往年のスター・竜田香具子を斡旋し、取り入ろうとする。その過程で現職農林大臣・是枝と製糖会社のただならぬ関係に金の匂いを感じた大屋は、探りを入れ始めるが…。輸入自由化で揺れ動く砂糖業界と政界の黒い関係にメスを入れた社会派の傑作!
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年北九州市生まれ。給仕、印刷工などの職業を経て、朝日新聞西部本社に入社。懸賞小説に応募入選した「西郷札」が直木賞候補となり、’53年に「或る『小倉日記』伝」で芥川賞受賞。’58年に刊行された『点と線』は、推理小説界に「社会派」の新風を呼び、空前の松本清張ブームを招来した。ミステリーから、歴史時代小説、そして古代史、近現代史の論考など、その旺盛な執筆活動は多岐にわたり、生涯を第一線の作家として送った。’92年に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あい
8
モデルになった実際の汚職事件や政治家・官僚がいる事を、解説で知りました。へえー…今で言うとモリカケがモデルの「新聞記者」みたいなものかな、ドラマも原作も見てないけど。主人公の職業は近頃なにかと話題(?)の某暴露系ユーチューバーみたい。ネットニュースでしか拝見した事ないけど。女をアテンドしたり提灯記事書いて稼いでいた主人公が正義漢ぶり始める展開に少し違和感があったけど、これって最初に主人公のイメージがガーシーで固定されちゃったせいかな? この手の汚職もアテンドも、いつの時代も形を変えて存在するんだろうね。2022/05/16
Nozomi Masuko
8
三流経済誌の記者である主人公は、大手製糖会社の社長に往年の女優を斡旋し、身辺のネタ探しのために取り入ろうとする。その過程で政界と製糖会社のただならぬ関係に金の匂いを感じ、探りを入れ始める。うーん?あらすじをあんまり読まずにタイトルで選んじゃったからか、あまり興味のない社会派作品だった。最後その女優がどうなったかもちょっと曖昧だったかな。わるいやつらの後に読んだせいもあって、妙に残念な気持ちになってしまいましたとさ。2015/10/03
こういち
8
利権に絡む構図は50年前と何ら変わることはない。本書は、戦後の砂糖を巡る政・財・官の癒着を鳥瞰するに打って付けの作品であり、重ねて心理的復讐の要素を絡ませて高度なサスペンスを構築している。何とも、タイトルが秀逸。今も昔も平坦な水面の底には、思いもよらない事実が潜んでいる。短絡的に上辺の映像に迷わされること無く、少しでも眼力を高める術を身に付けていきたい。2014/05/20
ランラン
5
砂糖業界の暗部に対して政界がそれにからんで甘い汁を吸うという構図をあぶりだしている。殺人事件はないがそれなりに楽しめた。2022/05/08
y_e_d
1
戦後の精糖業界の黒い部分をあぶり出す。その業界解説のウェイトが大きく、人間模様の部分が薄く感じてしまう。作者の筆力でそれなりに読ませるが、登場人物の「勝者」「敗者」の色分けも今ひとつ不明瞭で、個人的には他の作品と比べるとやはり落ちるかな、という印象は否めない。ちょっと残念。2018/08/23




