内容説明
雨が上がった多摩湖畔で死体が発見される。都心に事務所を構える商事会社の社長だった。丹波篠山に出張しているはずの父が何故四百キロも離れた場所で死んでいたのか?車椅子の美少女橋本千晶は父のポケットから見つかった“寺”の文字と“221588”という数字の謎を明晰な推理で解き始める。やがて、彼女の執念は老刑事を動かし、完璧なアリバイを崩してゆく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
52
死体が発見されたのは、雨上がりの多摩湖畔。彼が家族に伝えていた出張先は、丹波篠山。だが、実際に行っていたのは、全く違うところ。この作品は、登場するさまざまな土地だけでなく、とにかく被害者の娘の警察以上の推理と調査が読みどころとなっている。少し頭でっかちなところもある彼女には、きっとファンもつくことだろう。2023/09/07
ヨーコ・オクダ
18
「少女像は泣かなかった」を先に読んでしまってからのこちら。車椅子の美少女・千晶の父親が殺害された事件の謎解き。丹波篠山にいたはずの被害者がなぜ多摩湖畔で見つかったのか?彼が家族や社員に内緒で手がけていた仕事とは何か??動けない彼女なりの執念の調査と悪化した胃病を抱えながらも亡き娘と千晶の姿を重ねつつ進められる河内刑事の精根込めた捜査が実を結ぶ。内田センセ作品ではおなじみの岡部警部も登場。かつて、河内の娘に想いを寄せていた…なんてエピソードも出てきてエエ感じ。2018/10/29
十六夜(いざよい)
11
読み始めて初めて浅見光彦シリーズでない事に気付いた。老刑事と父親を殺害された車椅子の少女との親子にも似た友情が事件を解決に導く。ちょっとオーバーな場面もありましたが、面白い作品でした。2018/12/13
クルミ
8
丹波篠山に出張に行ったはずの父が多摩湖畔で死体となって発見された。車椅子の少女・橋本千晶は父の死の謎を推理する。捜査の中心は老刑事・河内。まっとうそうに見えた被害者の裏の顔。部下さえ知らない顔。なかなか捜査が進まなくて、読み疲れしました。2025/04/11
yamakujira
5
1984年刊行の作品を「日本の旅情×傑作トリックセレクション」シリーズとして新装した文庫本。誰も携帯電話を使ってないし、上越新幹線が大宮始発だったり、時代を感じるね。多作で知られる作家だけれど、これはミステリの王道と言えるほどのレベルだと思う。千晶が安楽椅子探偵役で河内刑事は有能な助手のようなコンビで、ふたりの人生模様もおもむきがある。紙片の数字、ハリのないハチ、同じ空襲など、謎のバランスもいい。唯一の不満はタイトルだな。「多摩湖」に惹かれたのに、これじゃ「多摩湖畔死体遺棄事件」だね。 (★★★☆☆)2016/08/01