内容説明
大学受験失敗と家庭の事情で不本意ながら看護学校へ進学した木崎瑠美。毎日を憂鬱に過ごす彼女だが、不器用だけど心優しい千夏との出会いや厳しい看護実習、そして医学生の拓海への淡い恋心など、積み重なっていく経験を頑なな心を少しずつ変えていく…。揺れ動く青春の機微を通じて、人間にとっての本当の強さと優しさの形を真っ向から描いた感動のデビュー作。
著者等紹介
藤岡陽子[フジオカヨウコ]
1971年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。報知新聞社を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学留学。その後、慈恵看護専門学校卒業。2006年「結い言」が第40回北日本文学賞の選奨を受ける。2009年刊行の『いつまでも白い羽根』がデビュー作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
235
ドラマは見ていて、ほぼ同じ。看護学校入学~卒業、その間に起こる恋愛や人間関係、進退問題、社会のしがらみとかの話。いい言葉が多く散りばめられてます。最後、卒業できて良かった、とほっとしてウルっとした。私は主人公瑠美や友人の千夏に近い性格。真っ直ぐな感じ。しかしいくら正しくても、最後で抵抗して退学ってのは私には無理。いいとこ取って生きなくちゃ。「(前略)常識というのはその場にいる人間で作られるの。だから常識が正しいことだとは、限らない。その場の常識だとか雰囲気に流されないでいられる人は、とても貴重だと思う。」2018/12/27
さてさて
224
『白は何色にも変わる』。白衣姿で命の医療の現場に向き合っていく看護師。そんな看護師になるための学びをすすめていく看護学校の学生たちを描くこの作品。そこには、”本当の強さと優しさ”とは何かという問いを求め続ける主人公たちの姿が描かれていました。人として誠実に、看護の現場に、人の命にと向き合っていく看護師たちの物語が描かれていくこの作品。恋も友情も描かれる”青春物語”でもあるこの作品。看護師の世界に興味がある人だけでなく、多くの方に是非読んでいただきたい、人の命に向き合うことの貴さに胸強く打たれる物語でした。2025/09/06
ちょこまーぶる
222
看護学校の講師もしているので、すんなりと状況が理解できて理想と現実の矛盾や建前と本音の恐ろしさを痛感した一冊でした。看護学生の過酷な学生生活と社会人経験者や高卒者の混在するという珍しいクラス内の人間・恋愛関係を見事に表していると思ったら、作者自らが看護学生経験者という事で納得できました。人は日々の苦難を経験したり悩んだりしたりすることで、本当に人として強くなっていくものであることを、文章から強く読み取れて社会人デビューする年齢層の人に一読してほしい本だと思いました。夢の実現の難しさも体現できました。2015/04/22
しんたろー
187
藤岡さん作品の4冊目に選んだのは、高校を出たばかりの瑠美 を主人公にした学校もの…「よくあるタイプの青春ものかな」 と高を括っていたら驚かされた…看護学校の実態、青春、恋、 死と盛り沢山な内容をデビュー作とは思えない力強さで描いて いた。瑠美の親友になる千夏の性格設定も優れていて、二人を 応援しつつ「青春って甘酸っぱくてイイなぁ」と思わされた。 患者絡みのことや千夏の問題が描き切れていないのが残念だが ”現実の厳しさ”と“温かい目線&情”を織り交ぜた作風は「藤岡 さんの性格なのだろうな」と納得した。 2017/06/26
ショースケ
141
現在私達は医療従事者の方々に感謝し、その壮絶な現場をニュースなどで目の当たりにして、改めて尊敬している。 自分にも降りかかるかもしれないウイルスとの戦いは厳しく本当に頭が下がる。 この物語は看護学校の学生たちの話である。実習が始まれば受け持った患者さんの看護過程の膨大なレポートの作成があり心身ともに疲れ切る。人間相手なのだから難しさもおおいにあろう。病院は生と死の詰まった空間だ。作者も書いている。何年か経てば忙しさに忙殺されて最初の生と死の感情が薄れていくのかと…またそうでなければ毎日やっていけないのだ。2020/06/27