内容説明
―自らの土地を教会に寄進することで楽隠居を考えた荘園主が、食事中に悶死する。殺害に使われたのは修道士の頭巾の異名を持つトリカブトだった。それもカドフェル修道士が調合したものが悪用されたとあっては見過ごせない。ところが、カドフェル修道士が調査に乗り出してみると、荘園主の妻は42年も前に将来を誓い合った女性だった。甘酸っぱい哀しさを漂わすイギリス推理作家協会賞に輝いた会心のシリーズ第三作。
著者等紹介
ピーターズ,エリス[ピーターズ,エリス][Peters,Ellis]
1913年9月28日、英国シュロップシャ州ホースヘイに3人兄弟の末っ子として生まれる。’33年から’40年までの7年間は科学者の助手・薬剤師として働き、第2次世界大戦では海軍婦人部隊に従軍。’36年に歴史短編小説を発表して、作家デビューを飾る。以後25年間に20冊以上の歴史小説を本名のイーディス・パージターで刊行する。’59年からエリス・ピーターズ名義で推理小説を書き始める。’81年にイギリス推理作家協会のシルヴァー・ダガー賞、’94年には大英勲章O.B.E.を授与される。翌’95年10月14日死去、享年82であった
岡本浜江[オカモトハマエ]
東京に生まれる。東京女子大学文学部英米文学科卒業。職歴は共同通信社記者、朝日カルチャーセンター講師
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
130
中世ものにしては、比較的わかりやすさがあり、僧院とはいうものの主人公の昔の恋人の話が出てきたりで楽しめます。トリカブトのことを修道士の頭巾というのですね。そういえばやはり毒があるジギタリスも似ている感じです。これも使い方によっては薬にもなるということのようです。この話もうまく決着をつけるところがやはり大岡裁きに似ています。昔読んだはずなのにすっかり忘れてしまっていました。2016/05/15
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
50
修道士カドフェルシリーズ第三弾。カドフェルが作った塗り薬、皮膚に塗れば痛みを取り除くことが出来るが、口から入ると猛毒のトリカブト(修道士の頭巾)を使った殺人事件が起こる。被害者は、カドフェルが40年前に将来を誓った女性、容疑者は、その女性の息子だった。カドフェルの優しさが胸にしみる作品。2017/04/14
ネギっ子gen
41
修道士カドフェル・シリーズの第三作。イギリス推理作家協会受賞作品。中世ウェールズでの土地境界線争いを巡る裁判など、本筋と離れたところで興味深い話が満載。1作・2作と、助手の見習い修道士には恵まれていない感もあったが、今回のマークは当たり。4作目以降も、続けて登場しそうな予感。そのマークと主人公の対話。「他人の失墜を喜ぶなんて、僕の心は邪です」と懺悔するマークに、「そうすぐに後光がさすようにならなくともよい。偽善は止めよう」と諭し「多少の悪が心に潜むのを認めなければ、聖人にはなれない」と語る主人公に痺れる。2019/08/26
たち
36
『修道師の頭巾』とは、トリカブトの事だそうで、今回はそれを使った毒殺事件でした。同じような年頃の少年がたくさん出てきて、誰が誰だか、少し混乱しましたが、この年頃の少年とカドフェルの組み合わせは面白いですね。なかなかよかった。なのでマークという助手はカドフェルにピッタリなのでは?長続きして欲しいな。2017/12/11
ぺぱごじら
23
時代背景や修道士カドフェルの人物もよくよく解ってきて、段々と面白さが増してきた第3作。神様に仕える人達の大仰で修飾豊かな、心があるのかないのか分からない表現に苦笑いし、だからこそ時折ぶっきらぼうに口から出る言葉に真言を感じ取りながら読み進めるのは楽しい。幾つかの小さい出来事ややり取りから、事件の全体像が浮き出てくる手法は、ドラマチック。修道院の人事問題やカドフェルの過去など小ネタもあり、ちょっとした『悪』が人間らしさの源とも感じたり(笑)。2013-1092013/08/13