出版社内容情報
ブッダの言葉を弟子たちが集めて編纂した最古の仏典。漢訳語の印象を排除して、原語に忠実にブッダの哲学の本質に迫る。
内容説明
インド北部に生まれた王子は、人の苦しみを乗り越える道を探るべく、29歳で裕福な生活を捨て、修行の旅に出る。そして6年ののちに「目覚めた人」すなわちブッダとなると、残りの生涯を説法に捧げた。人々の質問に答え、有力者を教え諭すブッダのひたむきさが、いま鮮やかに蘇る完訳。
目次
第1 蛇の脱皮の章(蛇の脱皮;牛飼いダニヤ ほか)
第2 小さな章(三宝;なまぐさ ほか)
第3 大きな章(出家;悪魔ナムチとの戦い ほか)
第4 八詩頌の章(欲望;洞窟についての八詩頌 ほか)
第5 彼岸に到る道の章(バラモンの門弟アジタの質問;バラモンの門弟メッテーヤ族のティッサの質問 ほか)
著者等紹介
今枝由郎[イマエダヨシロウ]
1947年生まれ。’74年フランス国立科学研究センター(CNRS)研究員となり、’91年より同研究ディレクター、2012年に定年退職。’81‐’90年にはブータン国立図書館顧問も務める。専門はチベット歴史文献学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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中玉ケビン砂糖
66
ここまで平易に現代語として咀嚼されたものとしては、(「超訳モノ」を除いて)もはやこれが限界、かつ「モアベター(誤用だがあえて)」の一冊になっている感。ニーチェが「犀の一角」に大きく感化されていたことは知られていたようだが、解題ではさらに宮沢賢治との繋がりが言及されている。明治期に口語訳で初刊行された書が賢治の生家から見つかっており、丹念に読み込んでいた形跡が見られることから、「雨ニモ負ケズ」を始めとした作品群に通底する彼の思想に大きな影響を与えたのではないか、という指摘だ。2022/05/03
ジョンノレン
57
ブッダは諸々の苦しみの源泉は執着にあると達観した。他方でブッダは人間の至高の状態を見出す事に徹底的に執着した。二面性は何事にも、屁理屈言うとブッダに叱られる?それにしても心に留めておきたい素晴らしい言葉にそこここで出会える至高の書物、繰り返し読みたい。以下覚書、苦しみは認識作用に縁って生起する、認識作用を停止し、ものごとをありのままに見る叡智を得れば、人は平安の境地に到る。清らかな人は、世の中のさまざまな見解について、どれが正しいかなどといった意見を持たない、論争の濁流に竿刺さない。→2024/04/28
zag2
37
ずっと前に読んだ中村元先生訳の岩波文庫よりも、たしかに読みやすく、たいへん分かりやすいと感じました。ですが、読みやすいことと、自分の身になる…覚れるかは別物。そうだよなあ、やっぱりなあと思いつつも、凡夫は執着を離れることが容易ではないことをあらためて感じています。2022/06/29
ドラマチックガス
19
最古の仏典のひとつらしい。流し読みする分には、特にすごいことを言っているようには思えない。ただ、ひとつひとつ「なぜ他の回答ではなくこの回答なのか」「なぜ他の修行者に失望した人がブッダのこの言葉に感銘を受けたのか」などを丁寧に考えていくと一生物の本になるのだと思うし、本来の読み方はそうなのだろう。手塚治虫『ブッダ』でアナンダがサーリプッタに言った「あらゆる苦しみには原因が~」というのが、ものすごく本質をついた要約なのだということは痛感した。2022/04/11
ハルト
15
読了:◎ やさしい言葉で綴られた「目覚めた人」ブッダの教え。子供でも読めそうなくらい噛み砕かれた説法には、くり返し、欲望を払い、渇愛や苦悩を消滅させよと説く。そうすることで、人は「静謐な人」となり、平安な境地に至れると、ブッダは云う。自分にはとうてい無理だなと思いつつ、読んでいると、心を易くしてくれるものだとも思った。すべてを捨て去るなんて、わかっていてもできないことを、修行として励むことの尊さ、難しさ。くり返し問答して弟子となりブッダに帰依する形式で、教えを諭す言葉。仏典がこういうものだと知れてよかった2022/05/28