出版社内容情報
第4巻につづいて、モスクワを舞台にフランス軍とロシア軍の全面対決を描く。
内容説明
モスクワに入ったフランス軍はたちまち暴徒と化し、放火か失火か、市内は大火で焼かれてしまう。使命感からナポレオン暗殺を試みるピエール。退去途中で偶然、重傷のアンドレイを見つけ、懸命の看護で救おうとするナターシャ。そしてモスクワを占領したはずのナポレオンだったが…。
著者等紹介
トルストイ,レフ・ニコラエヴィチ[トルストイ,レフニコラエヴィチ] [Толстой,Л.Н.]
1828‐1910。ロシアの小説家。19世紀を代表する作家の一人。無政府主義的な社会活動家の側面をもち、徹底した反権力的な思索と行動、反ヨーロッパ的な非暴力主義は、インドのガンジー、日本の白樺派などにも影響を及ぼしている。活動は文学・政治を超えた宗教の世界にも及び、1901年に受けたロシア正教会破門の措置は、今に至るまで取り消されていない
望月哲男[モチズキテツオ]
1951年生まれ。中央学院大学教授、北海道大学名誉教授。ロシア文化・文学専攻。『アンナ・カレーニナ』でロシア文学最優秀翻訳賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ずっきん
71
モスクワ陥落。またもや怒涛の一気読みしてしまった。表紙を見返すと呻き声が漏れそうになる。登場人物たちの造形の緻密さゆえ、翻弄される彼らとともに戦争を体感することに。特にピエールの目に映るものの衝撃。それでも読み続けてしまう。止まることが許されない。俯瞰なんて生ぬるいことしてんじゃねえぞ。これが戦争なんだと、一緒に巻き込まれていく。それを文章で描き伝えるトルストイの凄さよ。アンドレイの心の行く先は晩年の『イワンイリイチの死』と比較してしまうな。追い続けていたテーマなんだろうな。さあ、あと1冊を残すのみ。2024/04/08
molysk
69
フランス軍は人々が去ったモスクワに入るが、まもなく街は火に包まれる。避難の途上でナターシャは、重傷のアンドレイと再び出会う。ナターシャは自分の過ちを悔いて懸命に看護するも、死への恐怖を持たなくなっていたアンドレイは、安らかに生を終える。ピエールはナポレオンの暗殺を企てるも果たせず、フランス軍に捕らわれる。ともに捕虜となった農民兵の姿に、ピエールはロシアの民の強さを見出す。歴史を動かすのは英雄ではなく、大衆なのだ、とトルストイは語る。ロシアの大地に力を消耗させたフランス軍は、モスクワを去って西へと向かう。2022/03/26
南北
67
フランス軍のモスクワ侵入から退却までを描いている。著者は歴史の流れを皇帝や司令官の意図や戦略から説明するのではなく、多くの人々の考えが働いた一種の運動だとしいる。ただこうした考え方は宿命論に陥りやすいのではないかと思う。本巻では第4巻のような絵巻物ではなく、個々のシーンを取り上げた形になっているので、全体の流れがつかみにくいところがある。モスクワ入城後の弛緩したフランス軍の様子はおもしろかったが、ピエールが出会ったプラトン・カラターエフと死を「覚醒」と捉えたアンドレイ公爵が亡くなるシーンが特に心に残った。2021/12/24
kazi
45
面白いなあ!やっぱりトルストイは一味違うなあ!!第5巻はボロジノ会戦後のフランス軍のモスクワ入りから、ナポレオンがスモレンスクを目指して退去するまで。戦争と平和の特徴ってナポレオンのロシア侵攻のような歴史的大事件を、そこに関わったありとあらゆる階層の人物たちからのミクロな視点で描いているところにあると思うのだが、この第5巻から状況を大きく俯瞰したマクロ視点の記述が一気に増えた印象を持ちました。ボロジノ会戦以降の事態の推移に関する記述からトルストイ流の歴史認識が随所に見られて大変興味深いです。2021/05/24
たかしくん。
28
第5巻は、ロシア人が遂に明け渡したモスクワが炎上する。そんな中で義勇心に目覚めた筈のピエール君は、またもフランス人将校と妙に仲良しになってしまうお人好しぶり(笑)。その後、捕虜になってしまいながらも、ぎりぎりの処で死刑を免れ、今度は囚人仲間のプラトンと仲良しに。そんなドタバタ劇の一方で、ロストフ家は揺れる。ニコライは、2人の女性を天秤にかけながら、ソーニャを捨てマリアに向かう。並行して、ナターシャが偶然にも負傷したアンドレイに会ってしまい、結局は公爵の死を看取ることに。主役1名の退場と共に、物語も終盤に。2023/08/10