内容説明
ナターシャと破局後、軍務に復帰したアンドレイは、途中、父の領地への敵の接近を報せるが、退避目前で父は死去し、妹マリヤは領地農民の反抗にあう。一方ピエールは、戦争とは何かを探ろうと戦地へ向かう。モスクワに迫るナポレオンと祖国の最大の危難に立ち向かう人々を描く一大戦争絵巻。
著者等紹介
トルストイ,レフ・ニコラエヴィチ[トルストイ,レフニコラエヴィチ] [Толстой,Л.Н.]
1828‐1910。ロシアの小説家。19世紀を代表する作家の一人。無政府主義的な社会活動家の側面をもち、徹底した反権力的な思索と行動、反ヨーロッパ的な非暴力主義は、インドのガンジー、日本の白樺派などにも影響を及ぼしている。活動は文学・政治を超えた宗教の世界にも及び、1901年に受けたロシア政教会破門の措置は、今に至るまで取り消されていない
望月哲男[モチズキテツオ]
1951年生まれ。中央学院大学教授、北海道大学名誉教授。ロシア文化・文学専攻。『アンナ・カレーニナ』でロシア文学最優秀翻訳賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
77
ナポレオン率いるフランス軍のロシア遠征が始まった。退却を重ねるロシア軍と、侵攻を続けるフランス軍。ロシアの民衆は日常を失い、混乱に直面する。アンドレイは老父と故郷を失い、ピエールは初めて戦線へと向かう。モスクワを背後に控えたボロジノの地で、会戦を前にアンドレイは語る。勝敗を決めるのは作戦の巧拙ではなく、兵士たちの祖国を守る気持ちなのだと。両軍の衝突が始まり、ピエールは戦争の惨禍を目の当たりにして、アンドレイは重傷を負う。ボロジノの戦いは痛み分けに終わるも、トルストイはロシアの精神的な勝利を主張する。2022/01/09
ずっきん
75
とうとうはじまってしまった。ナポレオンによる侵略戦争である。この巻は物語に沿いながらも、トルストイの主観というか考察というか、とにかく主張が駄々漏れである。であるが、気にはならない。このための壮大な来し方だったのだろうから。もうそこにずっぽりと飲み込まれてしまっているから。ピエールが目にするもの。アンドレイの心の行方。肌が粟立つ。痺れて波立つ。何度本を閉じただろう。あと2巻か。ほんとにもう!どうなるんだ!?2024/04/05
南北
63
ナポレオンが率いるフランス軍とロシア軍が対決するボロジノ戦役を描いている。表舞台だけでなく裏舞台とつなぎ合わせることで一大絵巻物のようになっている。ナポレオンは評価を下げすぎな気がする、印象に残ったのはラブルーシカとアンドレイ公爵の妹のマリヤだ。ナポレオンの前でも物怖じしないラブルーシカのふてぶてしい感じがよかった。不細工とされているマリヤはトルストイの母親がモデルとも言われているが、避難の時の農民の反抗をニコライに助けてもらったときの美しく変化する様子が感動した。2021/12/20
kazi
43
再読中に、「あれ、こんな記述あったっけ?? (^▽^;)」となることが多いです。これだけ大きな物語なので、初読で読み落とした部分が多いですね。つかの間の平和は破られ、第4巻はいよいよ戦争に突入。ボロジノの戦いという名で知られるロシア軍とナポレオン軍の戦闘を中心に物語が展開します。禿山のシーンが特に印象的だが、老いも若きも、男も女も、貴族も百姓も、あらゆる階層の人間が戦争という圧倒的な現象に飲み込まれていく様子が描かれています。2021/01/17
たかしくん。
37
4巻はまるごとナポレオンとの戦争になります。その合間をくぐって主要人物が現れてきます。軍務に復帰したアンドレイ。傷心から回復に向かうナターシャ。モスクワの危機の中、頑固なボルコンスキー老公の死去、ニコライの助けがあってなんとか脱出できた妹マリア。そんな中、よくわからない使命感に駆られて戦場に同行し、そこで空気の読めない行動をしまくるピエール。ただ、彼の視点を通して戦場の悲惨さが伝わってきます。そして、ボロジノの会戦。戦いの勝敗は、「理屈ではなく、その場の勢い次第」と語るクトゥーゾフやアンドレイが印象深い。2023/07/23