内容説明
アウステルリッツの戦いで負傷し、奇跡的に帰還したアンドレイが領地に戻った当夜、妻リーザは男子を出産するのだが…。一方のピエールは妻エレーヌの不倫相手ドーロホフに決闘を申し込む。そしてニコライは、そのドーロホフからカードゲームで巨額の借金を負ってしまうのだった…。
著者等紹介
トルストイ,レフ・ニコラエヴィチ[トルストイ,レフニコラエヴィチ] [Толстой,Л.Н.]
1828‐1910。ロシアの小説家。19世紀を代表する作家の一人。無政府主義的な社会活動家の側面をもち、徹底した反権力的な思索と行動、反ヨーロッパ的な非暴力主義は、インドのガンジー、日本の白樺派などにも影響を及ぼしている。活動は文学・政治を超えた宗教の世界にも及び、1901年に受けたロシア正教会破門の措置は、今に至るまで取り消されていない
望月哲男[モチズキテツオ]
1951年生まれ。中央学院大学教授、北海道大学名誉教授。ロシア文化・文学専攻。『アンナ・カレーニナ』でロシア文学最優秀翻訳賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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molysk
69
ナポレオンの巧妙な作戦と、ロシア軍とオーストリア軍の稚拙な連携で、アウステルリッツの戦いは連合軍の大敗に終わった。アンドレイは傷つき捕らわれるも、出産をひかえた妻のもとにたどり着くが――。ピエールは財産と美貌の妻を得るも、心を満たされることなく、人生の意味を模索する。他人のために生きて、自らと家族を軽んじてきた己を責めるアンドレイ。自分のみではなく、人々の幸福のためにできることを探し始めたピエール。試練を迎えた二人は出会い、邂逅する。同じころ、ロシアはフランスと講和して、欧州はひと時の平穏を得る。2021/10/24
ずっきん
65
うーん、マジで面白い。夜会でキラキラウフウフしていた若造どもが、黒歴史をこしらえながらそれぞれの場所と時代を生きていく。それは、雨をたっぷりと含んだ曇天に常に覆われているような、鬱屈さ熾烈さ満載で、さらに若気の至りといういうか、それゆえの愚かさというか。だからこそ、アンドレイの青い空のエピソードが際立つ。思い出して幾度も空を見上げてしまうほど。ああ、こやつらはどうなっていくんだろう。こんなにもゆっくりと味わっていきたいと思う作品はいつ以来だろう。大作ゆえのネタバレを喰らわないよう細心の注意を払いつつ次巻へ2024/03/27
kazi
46
いや~、流石に読ませますね。アウステルリッツ会戦で見上げた無窮の青空と帰郷後に待ち受けていた妻の病死。アンドレイの人生観に大きな変化が訪れる。決闘事件やフリーメイソンとの出会いなど、ピエールもまた人生観を変える出来事を経験していく。心に深い傷を負い隠遁者のような生活を送るアンドレイをピエールが訪問する下りは、この作品の中で最も好きなシーンの一つです。未熟ながら純粋なピエールの熱意が厭世的になったアンドレイの内面に光を灯すこのシーン。友情っていいよね~。2020/12/21
たかしくん。
39
1巻で紹介された数々のキャラクターがそれぞれに動き出す。美人なエレーヌの不倫に悩まされるピエールに始まり、身重のリーザ夫人の不機嫌が気にかかる出征前のアンドレイ。舞台は次第に戦場へと移り、最初の山場、アウステルリッツの戦いへ。ここから、ニコライとデニーソフが活躍しますが、rが発音できないデニーの純朴さが好きかなあ(笑)。出産後に亡くなってしまうリーザとそれに付添うアンドレイには同情します。この巻の後半は、フリーメーソンに入れ込み始めるピエールが台頭し、かれとアンドレイの繋がりで物語が進みます。2020/11/23
フリウリ
30
戦場で倒れたアンドレイが青空を見上げて、自分は今まで何も知らなかった、と気づく場面は、やはり素晴らしいと思います。そして、戦死したと思われていたアンドレイが家に帰ったその晩、妻リーザがお産で亡くなると、トルストイは、「私(リーザ)はあなたたたちみんなを愛してきたし、誰にも悪いことはしなかったのに、あなたたちは私を何という目にあわせたの? ああ、私に何ということをしてくれたの?」と、魅力的な哀れな死に顔が語っていた、と書いています。人間の深さ、奥行き、わからなさがこのように描かれていて、息を吞みました。102024/07/15