内容説明
金策に失敗したフレッド・ヴィンシーは、意中の女性メアリを含むガース家の人々を窮地に立たせてしまう。また、フェザストーン老人の遺言をめぐる騒動の結末、リドゲイトとロザモンドの接近、ドロシアとカソーボンの夫婦生活の危機など、多層的な人間関係が発展していく第2巻。
著者等紹介
エリオット,ジョージ[エリオット,ジョージ] [Eliot,George]
1819‐1880。英国ヴィクトリア朝を代表する小説家。本名メアリ・アン・エヴァンズ。中部の土地差配人の家に生まれ、寄宿学校で教育を受けた後、自宅で外国語などさまざまな学問を独学で学び、30歳で評論雑誌の編集者補佐に。1857年、男性名「ジョージ・エリオット」で小説を発表(翌年『牧師たちの物語』として書籍化)。以後、小説を次々と発表し、成功をおさめる。’71年~’72年に分冊刊行された『ミドルマーチ』はヴァージニア・ウルフをはじめとする後世の作家たちに賞賛され、現代でも英国小説の最高峰との呼び声が高い
廣野由美子[ヒロノユミコ]
1958年生まれ。英文学者。京都大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
100
世界の名作であるというものの、わたしのような年寄りにとっては登場人物が多く一覧表がないと駄目なようです。それと分冊になっているのもちょっと間をおいてしまうと前の巻尚内容が忘れています。確かに読者ガイドがありそこで前巻の内容をおさらいしてくれるので少しは助かっています。多数の人物が出てくる群像小説なのでしょう。ディケンズの小説と似ている気がするのですが、それよりも人物がかなり多いので大変です。当時の上流家族の生活をきめ細かく書かれていてある意味資料的な意味があるのでしょう。2024/04/22
ケイ
95
遺言状にこめる気持ち。お前らにはやらんぞとほくそ笑む年寄りは……、しかし、最期に焼きたかった遺言状に手が届かないまま無念の死を迎える。改心しなかったスクルージというイメージ。貴族は職業を持つことが卑しいとされた時代だからこそ、遺産というものの持つ意味があると読むべきなのだが、やはり清貧という言葉を体現しているガース家には安心する……なのに、父親の仕事が見つかれば娘は働くのをやめるのだなあ。難しいところ。2024/10/04
ころこ
43
本作の職業意識は現代とは異なる。職業に就いて日々労働することが全面的には肯定されている時代ではない。恐らくガース家は中心ではないのだろうが、本巻においては娘のメアリと市長のドラ息子フレッド・ヴィンシーとの関係を中心に財産と職業について考察が興味深い。特に前半のフレッドとフェザストーンの遺産をめぐる駆け引きのようなやり取りは、時代によって見方が変わるのかも知れない。フレッドの働かずに他人の財産をあてにする生き方をみっともないと考えるかどうか、ちょうど時代の結節点だったといえる。『ミドルマーチ』が書かれたのは2024/09/03
syota
43
【第100回ガーディアン必読小説1000冊チャレンジ】物語が大きく動き出した。登場するのは主に中産階級の人々だが、中産とは言っても準男爵(上流階級との境界線上に位置)、地主、資本家、専門職と細かな上下関係が言葉の端々に伺え、興味深い。それぞれの人物描写が巧みなのも美点だ。特に巻末のカソーボン夫妻の描写は、屈折した微妙な心理や、二人の心の揺れを余すところなく描いていて見事の一言。男女の結婚をめぐる物語という点では先輩女性作家のオースティンに通じるものがあるが、内面描写や社会性などに半世紀の時の流れを感じる。2023/09/18
Bashlier
40
5/5 エリオット最高傑作という言葉に偽りなし。これだけ膨大な登場人物がいて、「誰一人不自然ではない」という異常さ。文豪の傑作でも、一人や二人はご都合主義的で”魂の入ってない人物”がいるものです。現代作品は言わずもがな。この作品には、本当にそういう人物が一人もいないのです。そして、フェザーストンのフレッドに対する深い愛情は感涙モノ。遺産相続に関する方針は、後継者に財産に甘えず成長してほしいという思いの表れでしょうか。しかし、その遺志には天罰が。ままならぬ世界をどこまでも写実的に進みます。2023/08/12