出版社内容情報
一兵卒の揺れ動く心理を精緻に描き、アメリカ自然主義文学の先駆といわれる名作。
内容説明
戦場での英雄的活躍に憧れ、北軍に志願したヘンリー。進軍の停滞で焦らされた末に戦いが始まり、興奮のうちに射撃し続けた彼だったが、執念深く襲いかかる敵軍の包囲に遭うや、高揚はたやすく恐慌へと変わるのであった。南北戦争を舞台に色彩豊かに描かれるアメリカ戦争文学の傑作。
著者等紹介
クレイン,スティーヴン[クレイン,スティーヴン] [Crane,Stephen]
1871‐1900。作家・詩人・ジャーナリスト。シラキュース大学在学中に小説を書き始め、『ニューヨーク・トリビューン』紙の特派員も務める。大学中退後、マンハッタンへ。生前は長らく経済的困窮や結核に苦しめられ、28歳で死去した。アメリカ自然主義文学の草分けとされる
藤井光[フジイヒカル]
同志社大学文学部英文学科教授、翻訳家。北海道大学文学部言語・文学コース卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まふ
108
南北戦争の激戦を兵士の視線から見た戦闘記。南軍の名将リー将軍の6万名の精鋭に完敗したジョセフ・フッカー将軍麾下の北軍13万名の敗戦記録でもある。だが、小説はほとんど小隊レベルの戦闘の場面に終始して勝ったのか・負けたのかさえも分からない状態で推移する。「自然主義的戦争小説」と称される所以である。戦闘の状況はかなり細かく描写されるが、大砲、爆弾などの重火器が少ないためか、他の戦争記録に比して読んでいて心が暗くならない。掌編だが心にズシリと来る戦記物であった。G565/1000。2024/07/17
みつ
29
『赤い武功章』の表題で知られるアメリカ南北戦争を舞台にした小説。長さ的にも『風と共に去りぬ』のような大ロマンスの介入する余地もなく、全篇にわたり若い兵士ヘンリーの体験する戦場のみが描かれる。表題は、彼が羨望する戦傷を指す(p104)。彼を初め兵士たちは会話の中では名を持つが、地の文では「若者」、「のっぽの兵士」、「やかまし屋の兵士」と固有名詞を失っているのは、戦争における個人の意味合いを象徴するかのよう。個々の戦場描写は前後関係が希薄で、目的に向かって進む印象はほぼない。終結はハッピーエンドとはほど遠い。2025/11/12
秋良
18
【G1000】戦争へ華々しいイメージを抱いて入隊するヘンリー。彼の視点から南北戦争を描く。歴史小説と違い、一兵卒の視点からのみ描かれるので戦況は定かでなく、兵士の高揚感や連帯意識、パニック、逃亡への後ろめたさ……と一人の人間が理想と現実のギャップにつまずき、やがて受容していく様子がリアルに描かれる。輝かしいヒロイズムの裏に透けて見える欺瞞や、それでもヒロイズムが無ければ戦えない(であろう)脆さまで、短いながら戦争の本質の一つを捉えた印象深い作品。2023/09/08
ハルト
12
読了:◎ アメリカ南北戦争の激戦地を舞台に書かれた作品。戦争に赴いた青年の、戦争における心理を生々しく表現されている。環境によってどう人間が変わるのかが緻密な筆で描かれており、戦争の無情さ愚かさが身に迫ってくるように感じられる。戦争文学の傑作と云われるのもわかる作品でした。2019/11/29
fseigojp
11
戦争小説の始まりだそうだ ヘミングウエイ推奨2024/10/10




