出版社内容情報
紀元前4世紀に書かれた。詩作だけでなく、今日の私たちが「芸術」と呼ぶさまざまなジャンルへの言及が見られる。
内容説明
「カタルシス」「模倣」の概念を用いて古代ギリシャ悲劇を定義し、ストーリー創作としての詩作の要になる「逆転」「再認」「受難」などについて分析した最古の芸術論。『詩学』の幻の喜劇論との関連が注目される『コワスラン論考』の全訳を、詳細な解説とともに付す。
目次
詩学―ストーリーの創作論
著者等紹介
アリストテレス[アリストテレス] [Αριστοτελησ]
384‐322B.C.。古代ギリシャを代表する哲学者。ギリシャ北部のスタゲイラに生まれ、17歳ころアテナイのプラトンの学園アカデメイアに入学、20年間研究生活を送る。プラトンの死後、小アジアなどでの遍歴時代を経て、50歳近くでアレクサンドロス王の庇護のもとでアテナイに学園リュケイオンを創設し、学頭として研究と教育に没頭した
三浦洋[ミウラヒロシ]
1960年生まれ。北海道情報大学情報メディア学部教授。博士(文学)。北海道大学大学院文学研究科(哲学専攻)博士課程修了。研究分野は、古代ギリシャ哲学を中心に、哲学、倫理学、芸術学にわたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
128
詩作をストーリーとの本質的な結び付きを追求して論じる。突飛な飛躍がなく、普遍と個別の対比も滑らかで明晰。詩人追放論者プラトンに対し、人間本性の観点から模倣とその快の意義を積極的に認め、叙事詩と比較して完結性や視覚・聴覚効果、カタルシスへ通じる「憐れみと怖れ」との固有な関係性を示して反論。感性主義な近代芸術論と対極な知性的認識と洞察を重視した本書は芸術論史の幕開けに相応しい。現代知性も刺激する傑作理論は古今東西に少なからず共通する。紀元前四世紀にこれを導き出したその洞察力からホメロスの別格な魅力にも迫れる。2023/06/07
molysk
69
「詩学」を一般的な邦題とする本書だが、その主題は「ストーリーの創作論」というべき芸術論である。詩作とは何か。それは模倣である、とアリストテレスは説く。模倣の素材、対象、方式の三つの点から、詩作は悲劇や喜劇などに区別できる。本書の現存部分は悲劇を主に論ずる。悲劇の本質は、ストーリーが観劇者に生じさせる憐れみと怖れを通じ、そうした諸感情からのカタルシス(浄化)をなし遂げるものである、とするが、浄化の解釈は古来議論の対象となってきた。西洋における芸術論の古典である本書が、後世の芸術に与えた影響は計り知れない。2024/01/21
ころこ
47
演劇における創作論です。訳注と解説が大半を占めており、アリストテレスの文章が簡潔なこともあって本文の情報量は少ないので、案外と読み易いのではないかと思います。各章の最初の方の文章に大事なことが書かれていたり、大事な個所は「まとめ」の小見出しが付されていたりと、プロップ『昔話の形態学』を想起させる明快な分類は、非常に現代的な印象を残します。指向がオリジナルの創作物に向いていないところは、両者共通といえるのではないでしょうか。喜劇よりも悲劇が重要で、人物の性格を表現するのではなく行為を模倣することによってスト2021/09/29
Tenouji
22
悲劇の物語を、要素と構成に分けてまとめてるんだね。今だと、モデル化やプロセス化として、普通に理解できるけど、これを紀元前にやってるとは。しかも、劇を「模倣」という観点から見て、「感情」が人間に起こる事を、客観的要素と構成に分けれてるのが感心する。確かに現代でも通用する内容だが、現代は「模倣」するものが無くなっていく時代だったりしてw。2020/03/17
きゃれら
21
近藤康太郎「百冊で耕す」の推薦書で初アリストテレス。簡潔な言葉で言いたいことをズバリ言っている文に、難しいという先入観が裏切られる。しかし内容は易しくない。重要概念である「カタルシス」の定義は、本書の研究では論争の的となっており確定解釈がないとのことで、それなのに自分は何となくの感じで使っていたな。子供のころから様々な物語を読んできたが、「ストーリーの在り方」について分析し、後年に大きな影響を与えたこんな本が紀元前にあったなんて、読まないでいて損した気分。詩には興味がないせいで誤解していたわけだが。2023/08/07