出版社内容情報
ハイデガー[ハイデガー]
著・文・その他
中山元[ナカヤマ ゲン]
翻訳
内容説明
現存在は世界においてどのように存在しているのか。ここまで、世界内存在を構成する三つの契機を示す概念「世界」「世人」「内存在」を手がかりに考察を進めてきた。この第5巻では、現存在の存在様式の全体を捉えるまなざしとして「気遣い」という観点から考える。(第6章第44節まで)
目次
第1部 時間性に基づいた現存在の解釈と、存在への問いの超越論的な地平としての時間の解明(現存在の予備的な基礎分析(現存在の存在としての気遣い))
著者等紹介
ハイデガー,マルティン[ハイデガー,マルティン] [Heidegger,Martin]
1889‐1976。ドイツの哲学者。フライブルク大学で哲学を学び、フッサールの現象学に大きな影響を受ける。1923年マールブルク大学教授となり、’27年本書『存在と時間』を刊行。当時の哲学界に大きな衝撃を与えた。翌’28年フライブルク大学に戻り、フッサール後任の正教授となる。ナチス台頭期の’33年に学長に選任されるも1年で辞職。この時期の学長としての活動が、第二次大戦直後から多くの批判をうける。大戦後は一時的に教授活動を禁止された。’51年に復職、その後86歳で死去するまで旺盛な活動を続けた
中山元[ナカヤマゲン]
1949年生まれ。哲学者、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hitotoseno
6
本巻には『存在と時間』の最も魅力的な箇所ともいえる第六章が掲載している。「不安」「気遣い」、そしてハイデガー独特の「真理」観が余すところなく展開されており、この章だけでも『存在と時間』が二十世紀最高の哲学書の一つであることの証明となりうるだろう。現存在の本来的な在り方に肉薄するような叙述が続く中で、第43節においては「実在性(Ralität)」というややマニアックな概念について検討が行われている。 2021/04/20
tieckP(ティークP)
6
最初は不安と恐れの違いについて。対象を外にもたない不安はむしろ存在と深くかかわるものであり、現存在が頽落していることを気づかせるものであるということ。面白いと同時にやっぱり啓発書っぽい。その後はこの世界とのかかわりにおける気遣いSorgeの位置づけや、存在者が存在を成り立たせるというところからの真理の再解釈など。僕にはそれが他より正しいというよりハイデガー的モデルとして今は感じられる。解説は相変わらず丁寧で、ハイデガーの主張がどうした哲学史的な文脈でなされているかを教えてくれるので有益。刊行間隔は辛い。2019/02/06
イシカミハサミ
5
4巻までを本当にわかっていたか不安にあるさらに難解な5巻。 今回もただただ後半の解説文に感謝です。 恐怖が外からやってくるのに対して不安は内からやってくる。 そもそもが自身のありように由来するから際限がない。 とても分かりやすい話。 時勢にも合っていた話題。 「真理」は「自然」からすると「人間」と同じ「存在」。 りんごが木から落ちる現象は昔から変わらないけれど、 ニュートン以前は物体の持つ性質で説明されていた。 (アリストテレス) 人間の営みの矮小さを突き付けているようでなんだか痛快。2020/03/18
tsukamg
2
例によって一つの節を読むごとに解説を読んだ。真理についての分析がクライマックスだった。現存在は、自らを開示し、露呈させる存在であり、真理も露呈された時に存在者となるから、つまり真理は現存在があってこそ存在するものなのだ、という内容だったかな。たぶんそう。そのはず。2022/04/21
わたる
1
第5巻では、まず情態性の1つである不安について考察する。不安は恐れと似た概念だが、その対象は未規定である。 未規定な対象に対する不安が現存在を世界に向けて開示して孤独感を開示させる。そして現存在は不安から逃れるために頽落して自らについて理解する能力を奪われてしまうのだ。 後半では哲学において重要な意味を持つ真理について考察する。この部分については解説を読んでも理解しきれなかった。ハイデガーはアリストテレスによる真理の定義に立っている。そして現存在がいる限り真理が存在すると述べる。2022/11/29