出版社内容情報
フォークナー[フォークナー]
著・文・その他
黒原敏行[クロハラ トシユキ]
翻訳
内容説明
お腹の子の父親を追って旅する女、肌は白いが黒人の血を引いているという労働者、支離滅裂な言動から辞職を余儀なくされた牧師…米国南部の町ジェファソンで、過去に呪われたように生きる人々の生は、一連の壮絶な事件へと収斂していく…。ノーベル賞受賞作家の代表的作品。
著者等紹介
フォークナー,ウィリアム[フォークナー,ウィリアム] [Faulkner,William]
1897‐1962。アメリカ合衆国の小説家。ミシシッピ州に生まれ、生涯のほとんどを同州オックスフォードで過ごす。第一次世界大戦に志願するも戦地に赴くことはかなわず、その後ミシシッピ大学に入学。1年で退学した後、ニューオーリンズでシャーウッド・アンダスンの知己を得て、長篇小説に専心。『響きと怒り』『サンクチュアリ』『八月の光』『アブサロム、アブサロム!』など、ヨクナパトーファ郡ジェファソンという架空の町を舞台とした作品群が1940年代に再評価され、世界的名声を確立した
黒原敏行[クロハラトシユキ]
1957年生まれ。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
110
フォークナーの長編初読み。何とも読み応えのあった小説。人間が見せる様々な姿に心をひりつかされながらも、それらから目を逸らせず憑りつかれたように読み耽った。そこに描かれるのは文学がずっと追いかけているテーマと思えた。南部アメリカの町で交錯する三人の男女。人は自己の意識に縛られる。その自意識に翻弄されるクリスマス(男性)、自意識を放棄したハイタワー、そして達観したかのようなリーナ。現実は二人の男のように社会の虚無感に呑み込まれがちだが、ひと筋の光として著者は彼女を登場させた。祖母も含め女性の存在が印象深い。2022/02/08
ペグ
93
『八月の光』読み比べ。今回は待ちに待った黒原敏行さん訳。読みやすい!読み終わった時は喝采の声をあげてしまった。ところで、陽のブラウンと陰のスメンジャコフ(カラマーゾフ〜)は異母兄弟か。様々な人々の苦悩の叫びを描き、背景にはリーナの一貫した静けさが際立つ。再読決定。2018/06/02
巨峰
83
難解だと聞くフォークナーの大長編。こんなにすぐ読んでいいのかと思うくらい一気に読んでしまった。100ページ1時間くらいのペースか。しっかりとした大きな伏線が巡らされており、さすがに外国文学の大作だなと思いました。この訳者の方は前に読んだのも良かったですが、今回は一部超訳って言っていいくらいかもしれないけど訳が凄く読みやすくしているんだと思います。2018/06/14
Willie the Wildcat
82
アイデンティティを巡る当惑、葛藤の齎す心情の揺れ。2つの生が交錯、宿命を引き継ぐ。求めるのは正義や権利であり、問い続けたのは加護。クリスマスとブラウンが、この点でも対照描写と推察。少々強引だが、その向き合い方を”喜怒哀楽”で考察すると、リーナ/クリスマス/バイロン/ブラウン。受け入れることによる自己否定への恐れと欲望。慈しみとなるか、それとも暴力となるかの分岐点は何か?様々な対比で、読者に問いかけている感。希望を醸し出す”喜楽”の旅立ちに著者の希望が滲む。2018/08/12
ペグ
79
何度目かな〜この小説にチャレンジしたのは。今回気がついたこと。最初に読んだ時、どうにも解りにくかったこの作品、今回ようやく気がついたのは、物語(ストーリー)を(水平)に線を引き登場人物を線の上に立たせる(垂直)と、黒原さんの素晴らしい翻訳に助けられて、人々が生き生きと動きだした。何度読んでも、新しい発見と記憶に残る鮮明な場面。なんと立体的な作品なのだろう!2018/08/19