出版社内容情報
バルザック[バルザック]
中村佳子[ナカムラ ケイコ]
内容説明
出世の野心を抱いてパリで法学を学ぶ貧乏貴族の子弟ラスティニャックは、場末の下宿屋に身を寄せながら、親戚の伝を辿り、なんとか社交界に潜り込む。そこで目にした令夫人は、実は下宿のみすぼらしいゴリオ爺さんの娘だというのだが…。フランス文学の大傑作を読みやすい新訳で。
著者等紹介
バルザック,オノレ・ド[バルザック,オノレド] [Balzac,Honor´e de]
1799‐1850。フランスの小説家。トゥール生まれ。8歳からの6年間、寄宿学校に入れられる。17歳で代訴人の事務所に見習いとして入り、パリ大学法学部に通う。このころから文学者を志し、20歳のころパリ市内の屋根裏部屋に住んで小説を執筆し始める。人間を観察し、その心理を精密に描きつつ、社会全体をも映し出す長短編小説を次々に生み出し、巨大な作品群によってフランス社会そのものを表す「人間喜劇」を形成していく。旺盛な執筆活動の他に、年上の貴婦人たちと数々の浮き名を流したことでも知られる
中村佳子[ナカムラヨシコ]
1967年広島県生まれ。フランス文学翻訳家。広島大学文学部哲学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ykmmr (^_^)
150
『人間喜劇』は長い(?)その中の有名作。解説にも書いてあったが、『リア王』の一編に置かれても違和感のない作品。また若い女性たちに対するゴリオ爺さんの『扱い方』が川端文学の『山の音』にも、私は見えた。喜劇ならぬ、『悲劇』を金と変なプライドで育てて、それを崩して更に強化。『金』は良くも悪くも、『人』と『人生』を変える。しかし、ゴリオ爺さんは何だか憎めない稀代のマイペース。作品はスピード感があるのに、彼はそれに挫けません。(笑)最後の青年ラスニャックも、「当たって砕けろっ。」とマイペースに啖呵を切る。2023/01/05
ねこ
144
少し前、週刊ダイヤモンドのコラムで「今だから読みたい本」として「ゴリオ爺さん」が紹介され読みました。200年程前のパリの社交界を舞台に、主人公の若く野心溢れる貧乏学生のラスティニャック。タイトルにもなっている2人の娘を持つゴリオ爺さん。商人あがりの40男ヴォートラン。ゴリオ爺さんの娘達、ニッシンゲン夫人とレストー夫人。他にも登場人物は多く相関表を見つつ読みました。この物語の主題は「絶対にわからないだろうと期待して悪事を犯すこと」に対しての個々人の良心と野心の葛藤にあると私は感じました。今も昔も変わらないね2023/03/03
藤月はな(灯れ松明の火)
118
一昨年の年末に挫折した本に挑戦。ゴリオお爺さんに注目すると悲惨な物語ですが、社交界での成り上がり術の場面は『赤と黒』並に面白い!だが、元々は商売への先見の明もあり、小麦の種類も口にしただけで分かる、凄い人が何故、ここまで周囲から馬鹿にされ、蔑まされればならなかったのかと無常観に襲われる。ゴリオお爺さんの姿を見ていると何故か、『よだかの星』のよだかみたい痛ましさを覚えずにはいられないのです。義理の息子ではなく、都合の良い時に金をせびりに会いに来るバカ娘共を一度、引っ叩くなりすりゃまだ、救われたのですが・・・2019/01/05
夜長月🌙@新潮部
79
結婚の意味合いは時代と共に移り変わります。19世紀のパリで結婚とは地位とお金を得るためのものであり不倫とは愛を得るものでした。ゴリオ爺さんはそんな時代に翻弄された一人です。父娘の愛情において娘のためなら命さえ投げ出す父は珍しくありません。しかし、その愛を当然のものとして感謝さえもしないのには悲しみしかありません。もう一人の重要人物ラスティニャックの野心のゆくえからも目を離せません。その到達点である世界の無惨を詰め込んだような高貴な人々の舞踏会は圧巻でした。全てが終わった時こそが彼の始まりのときだったのです2022/02/19
アナーキー靴下
61
『イライラ文学館』を読み、子育てで親がイライラするのは子供としっかり向き合っている証なのでは、とか考えた直後に本書を読んだ為、始めのうちは子育ての上澄みだけを楽しみ溺愛したゴリオ爺さんによりスポイルされた娘達、と思っていた。しかし読み進めるうち、苦しみこそが愛の真髄であり、最も甘い蜜のように思えてきた。そしてゴリオ爺さんは娘達から苦しみを根こそぎ奪った強欲者のように。「どうして、おまえたちは不幸にならないと仲良くできないのだろう?」喜びを分かち合い生まれる繋がりは一瞬。苦しみの方が人を強く結びつけるのだ。2024/06/07